「創作活動って興味はあるけど、何をしたら良いかわからない…」そんな方に必見!創作活動のポイントを現代詩の部・審査員の水無田先生に伺いました。

審査のポイント

現代詩は決して、「短く行分けされた小説や随筆」のようなものではありません。状況、設定、書き手のプロフィールなどは、すべて無用です。オチなどをつける必要もありません。強いていえば、言葉が醸成する「印象の強度」をいかに表現するか、これがそのまま作品の生命線となります。言葉から単に説明的なるものを脱落させるというような感覚や手法ではなく、より積極的に印象へと収斂させていく感性を大切にしてください。加えて私は審査に当たる時、作品を目と頭で読むだけではなく、朗読したときの感触も見るようにしています。ご参考までに。

創作時のアドバイス

<初級編>
 正直、詩の書き方は詩人の数だけあると思いますので、次の助言はあくまでも参考程度にしてください。まずは、あなたが詩でしか書けないことを考えてみてください。おそらく詩以外でも書き得ると思う題材よりも、それは確実に詩になりたがっている何かでしょう。そしてそこから逆算して、詩の印象の強度を妨げないよう連(詩の行のまとまり。通常1行空けて他の連と区別)の切り方、比喩表現、韻律等々を考えましょう。どうもその逆、詩でなくてもよいものを詩のような体裁で無理に仕上げた作品が目立ちます。それが難しければ、通常の発話や文章のような言葉へのアプローチは、いったん忘れてから始めてみましょう。

<上級編>
 私見でしかないことを書きます。詩になる寸前のものをつかまえる瞬間というのは、詩について無理に考えていると訪れにくいものです。詩を書くことを客観的に認識しつつも同時に認識していることを忘却している時に、詩の最初の印象は一番それにふさわしいかたちをともなって、言葉の通常の規則や用法を蹴り破って出てくるように思うのです。ですから詩を書くことは、常に詩を傍に置いて暮らすこと、話すこと、食べること、歩くこと、思うこと、留まること、跳ねること、などと紙一枚くらいの差の場所にあり、同時にとてつもなく遠い場所にあるようにも思います。ただ、これだけが詩と思う必要はなく、むしろそのように詩を定義すること自体が言葉から詩を遠ざけてしまうので、難しいところなのですが。

【水無田 気流・みなした きりう】
 
1970年神奈川県生まれ。早稲田大学大学院社会科学研究科博士後期課程単位取得満期退学。2002年から、水無田気流の筆名で思潮社の『現代詩手帖』に詩作品の投稿をはじめ、2003年に第41回現代詩手帖賞を受賞。2005年に『音速平和sonicpeace』(思潮社)を出版、翌年に同作で第11回中原中也賞受賞。2008年、『Z境』で第49回晩翠賞受賞。また社会学者としても活動し、学術論文の執筆などを行うほか、評論に『背表紙の社会学』(青土社、2020年)、『「居場所」のない男、「時間」がない女』(ちくま文庫、2020年)、『多様な社会はなぜ難しいか 日本の「ダイバーシティ進化論」』(日本経済新聞出版社、2021年)等多数。2013年度朝日新聞書評委員に就任。2016年4月より國學院大學経済学部教授。

 

★応募に関する情報は、応募概要ページ でご確認ください。

★受賞作品を読んでみよう  短篇小説の部 ・ 現代詩の部 ・ 短歌の部 ・ 俳句の部