額が触れ合うような近距離で、札を取るスピードを競う

東京・暁星高校競技かるた部は、7月の全国高校小倉百人一首かるた選手権大会で7連覇を飾った強豪。試合形式の実戦練習と個人練習を積み重ね、全国8連覇の偉業達成を狙っている。 (文・写真 青木美帆)

コンマ数秒の駆け引き

「ドシーン!」「バーンッ!」
 競技かるた部が練習する室内に、柔道の乱取り稽古を思わせるような音がこだまする。
百人一首の中から無作為に選ばれた50枚の札を、1対1で取り合う競技かるた。札を取るための反射神経や、相手が伸ばした手に競り勝つ力が必要とされ、その激しさから「畳の上の格闘技」と称される。試合中の突き指や骨折も珍しくない。家族で正月などに楽しむかるたとは、まったく別物だ。
 副将の東友則君(1年)は「最初は遊びと思っていたけれど、コンマ数秒での駆け引きは他の競技にない魅力」と話す。

 イヤホン自粛で耳を守る

 部の活動日は週4日。平日1時間半、土曜日5時間の活動時間中は、部員同士でひたすら試合形式の練習に取り組む。
 部員たちは、自主練習や体のケアも欠かさない。東君は下半身を安定させるため筋力トレーニングに励む。主将の亀井雄介君(2年)は、読み札を正確に聞き取る「耳」を大切にするため、音楽を聴くときは絶対にイヤホンを使わないと決めている。 

 

厳しい言葉も受け止める

大会に出場するメンバーは8人。例年、部員数が少なく、各学年からメンバーが選ばれる。「全国優勝の経験者が、必ず次の代に残っていることも、毎年優勝できる要素の一つです」(亀井君)
 大会前は、練習の緊張感が一気に高まる。時には厳しい言葉が飛び交うことも。部長の歌田裕太君(2年)は「本気で勝ちたいからこそ、言われたことを適当に流さないで受け止める。それが暁星の強さ」と胸を張る。
 歌田君は「個々の実力アップがうまくいけば8連覇も狙える」と自信をのぞかせた。

 

【TEAM DATA】
1990 年創部。部員数8人(2年生3人、1年生5人)。全国高校選手権大会で9 度の優勝を誇る。7月にあった全国高校総合文化祭の小倉百人一首かるた部門にも、主力メンバーが東京都代表の一員として出場し、史上初の5連覇に貢献している。