「トビタテ!留学JAPAN」で海外留学する高校生ら(6月11日、文部科学省であった壮行会)

 

文部科学省が民間企業と協力して高校生の留学を支援する「トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム」で今年度、海外派遣される高校生511人(女子372人、男子139人)が決まった。奨学金として留学費用が支給される派遣生は、この夏から順次、2週間から1年間の留学に旅立つ。

186の企業・団体が支援

「日本代表プログラム」の高校生コースは昨年度から始まった。①アカデミック②スポーツ・芸術③プロフェッショナル(職場研修など)④国際ボランティア――の4コースで募集。選ばれた高校生は自分で立てた計画に基づき、2週間から1年間留学し、渡航費や現地での授業料などは奨学金として支給される。大学生コースも含め、186の企業・団体が111億円を支援する(6月時点)。

制度変更で応募しやすく

昨年度は514人が応募し303人が派遣された。「2期生」となる今回は、全国817校から2058人(女子1438人、男子620人)の応募があり、331校511人が派遣生に選ばれた。

応募者が大幅に増えたのは、2年目となり高校生への周知が進んだことのほか、応募しやすい制度に変更されたためだ。現地の学校で学ぶアカデミックコースに、語学を中心に学ぶ「テイクオフ」と長期留学の「ロング」を加え、選びやすくした。テイクオフコースは通常の締め切り(2月)の後、1年生が4月に応募できるようにしたところ、308人の応募があった。

現地では「大使」活動も

6月11日に東京で、18日には神戸で壮行会と事前研修会が開かれた。派遣生は班をつくり、留学計画を発表し、アドバイスし合った。派遣生は留学先では「日本代表」として、日本の良さや出身地の魅力を伝える「アンバサダー(大使)活動」が求められるほか、帰国後は留学体験を同世代などに広める役割も担う。

留学先で学びたいことは?

 フィリピンでボランティア 

派遣生の一人、野原ひかりさん(熊本・宇土高校2年=国際ボランティア)は、フィリピンに3週間留学する。国際協力に関心があり、現地では「ストリートチルドレンと触れ合い、現地の教育や医療について知り、自分の感性にも磨きをかけたい」と意気込む。

 米国でスポーツ学ぶ 

山村亮太君(千葉・市川高校1年=スポーツ・芸術)は、聴覚にハンディがあるが、陸上の短距離競技で活躍し、合唱祭の指揮者など積極的に挑戦してきた。「健常者と障害者がスポーツで競い合える社会をつくる」という夢があり、米国のスポーツ教育機関IMGアカデミーに3週間留学する。「陸上競技のスタートの方法や栄養学、スポーツ科学を学ぶと同時に、同世代の人たちに障害者への接し方も聞きたい」と言う。

 起業家スキルを地元に還元 

吉村公介君(山梨・山梨学院高校3年=アカデミック)は7月2日から約1カ月間、米国・リーハイ大学が世界の高校生向けに開く国際起業家育成プログラムで学ぶ。「起業家スキルやリーダーシップを徹底的に学び、地元山梨の中高生に伝えたい」と語る。帰国後は地元に高校生の留学支援団体をつくる構想もある。

 オランダの物流企業で研修 

新尋開理君(福井・高志高校2年=プロフェッショナル)は将来、「物流」に関する仕事に就くのが目標。そのため8月に1カ月間、オランダに留学し、ヤマト運輸の現地法人で研修する。「私たちの周囲のもの全てに物流が関わっています。オランダには大きな港湾がある。日本ではできない学びをしたい」と話している。

 

スリランカでボランティア

 「トビタテ!留学JAPAN」昨年度派遣生リポート 

寺社下弥生(3年=高校生記者)

日本語を教えた子どもたちと(右端が寺社下さん)

私は昨年の夏休みの3週間、「トビタテ!留学JAPAN」の派遣生としてスリランカに留学し、教育ボランティア活動に取り組みました。

英国人・中国人と活動

最初の2週間はホームステイをしながら、同年代の英国人と中国人の女子2人と活動しました。一緒に幼稚園で英語のゲームを子どもたちに教え、施設の外壁に絵を描くボランティア活動もしました。

英語が得意ではありませんが、恥ずかしがらずに分からない言葉は質問し、いつも3人が分かるまで説明し合いました。気づいたら毎日3人で笑い合う仲になっていました。

折り紙教室を企画

最後の1週間は、別のステイ先に移動し、ホストマザーが校長先生を務める孤児院で、子どもたちに日本語を教えました。子どもたちが熱心に勉強する姿を見て、「自分は恵まれた環境で勉強できるのに何をしていたんだろう」と恥ずかしくもなりました。

私は子どもたちと母親が集まる施設で折り紙教室を開きました。スリランカは紅茶が有名なのでティーカップと鶴の折り方を教えました。

ニーズに応える大切さ学ぶ

留学を終えて痛感するのは、本当に役立つボランティア活動をするには、知識と技術、臨機応変にニーズに応える力が必要だということです。

私がしたことは、本当にニーズのある活動ではなかったかもしれません。ただ、微力だけど、無意味なものではなかったとも思います。相手が必要としていることからそれることなく手を差し伸べる。このことを忘れずに、私はこれからも、積極的に行動していきたいと思っています。