スタディプラスの廣瀬高志社長

自分の勉強の記録をグラフ化したり、SNSで勉強仲間と励まし合ったりできるアプリ「Studyplus」が中高生などの支持を集めている。運営するスタディプラス株式会社を学生時代に起業した、社長の廣瀬高志さんは「ITで教育の在り方の変革を目指す」と話す。
(平野さゆみ)

「勉強継続」アプリで支援

 利用者が120万人に上るアプリStudyplusは、自分が使っている教材名を登録し、何を、いつ、どれくらい勉強したかを入力すると、グラフで可視化される。それを見れば、勉強した達成感を味わったり、改善点を見つけたりすることができる。利用者同士の交流によって、挫折しがちな自主学習を楽しく続けられるのも魅力だ。

 廣瀬さんは「勉強する人にとって最大の課題は、勉強を継続すること。重要なのは、勉強を続けるモチベーションをいかに高めるか、です。そのために僕が高校時代にやっていたのが、日々の勉強記録をつけることでした。実はこれがStudyplus開発の原点なんです」と話す。

大学生の時に起業

 大学3年次に友達と3人で起業した。「教育×IT」という切り口で事業を立ち上げたのは、経験も人脈も実績もお金もない若い起業家が強みにできるのはITだと考えたからだ。

 「教育分野はITの活用が遅れている分、チャンスが多いと思ったんです。それと、若い僕らだからこそイマドキの大学受験生のニーズが分かるぞ、という自負もありました」

 とはいえ、最初から順風満帆だったわけではない。サービス開始時は利用者の反応もいまひとつ。この時は勉強記録がつけられるだけで、SNS的な機能はなかった。利用者数が伸び悩む厳しい状況を変えるきっかけになったのは、利用者の声だった。

(左)勉強時間などを記録したグラフ、(右)勉強仲間と交流できるSNS機能(画像提供・スタディプラス)


交流機能が起爆剤に

 「ほかの人がどんな教材でどれくらい勉強しているのか知りたい、という要望があったんです。勉強量や志望校に関することはリアルの友達とは話しづらいという心理があることも分かりました。そこで気づいたんです。匿名で交流できるSNS的な要素が必要なんだ、と」

 早速、使っている教材や、志望校が共通する勉強仲間と交流できるSNS機能を加えた。勉強記録を公開すると、名前も顔も知らない「勉強仲間」から「いいね」やコメントが返ってくる。「それが励みになる」と人気を呼び、利用者が急増した。

 廣瀬さんは今後も「ITを使った学習支援の新たな形をつくっていきたい」と話す。根底には、日本の教育の在り方を抜本的に変えたいという熱い思いがある。

 「今の教育は、先生から教わる『受け身の学び』。それを、自ら学習する『主体的な学び』に転換したい。難しいけれど、ITを活用すればきっと実現できると思っています」

 ひろせ・たかし 1987年生まれ。小学生の時から起業を志す。中学・高校時代はバスケットボール部の活動に没頭。慶應義塾大学法学部に入学後、1年次からベンチャー企業で働く。3年次に大学生向けのビジネスコンテストで優勝。これを機に、大学生3人で「株式会社クラウドスタディ(現スタディプラス株式会社)」を設立。事業に集中するため大学を中退。大切にしているのは「自分自身が学んで成長すること」


 高校生記者インタビュー   
諦めない心が大切


高校生記者が廣瀬さんに学力アップのコツなどをインタビューした。
(牧口香奈)

Q 勉強時間をグラフ化するメリットは何ですか。

A グラフで記録することで、頑張りや怠ったことなどが一目で分かります。するとモチベーションが上がり、勉強を続けやすくなるのです。

Q 高校生時代を振り返って、今の高校生にアドバイスをお願いします。

A 情報を集め、自分の視野を広げていくことで選択肢が広がります。学校での勉強も大事ですが、それ以上に自主学習も大事ですよ。

Q なぜですか。

A 自分が苦手だなと思う部分や強化したい部分を、自分のペースで自分の方法で勉強できるからです。

Q ご自身の成功の秘訣(ひけつ)は。

A 諦めない心ですね。新しいことに挑戦すれば、最初はうまくいかなくて当然。それでもやり続けることが、成功につながると思います。
 

 

企業データ
スタディプラス株式会社
 「学習の支援を通じて可能性を広げ、自己実現できる人を増やす」を経営理念に、2010年創業。学習管理プラットホームアプリ「Studyplus」を中心に運営している。従業員10人(2015年8月現在)。平均年齢32歳。求める人材は「優れた技術を手段に、よいサービスを提供することを通じて社会に貢献したいと思ってくれる人」。