ブラジル世界大会、キッドサイズ部門で優勝したときの様子

2016年4月、新たに3つの学部として生まれかわる工学部。今回はさらに進化する工学部の2つの研究室を取材した。
—————————————————

 創造工学部 デザイン科学科 松崎元教授

科学で実証された「ここちよいデザイン」を目指せ

「デザイン」という言葉から、美術系大学をイメージする高校生も多いだろう。工業大学で学ぶデザインとは、どういうものだろう。

より機能的で美しいものづくりを追求
 松崎元教授は、陶芸を例に説明してくれた。「陶器を作る職人にも、鑑賞用の器を作る人と日常づかいの器を作る人がいます。外観の美しさを追求し鑑賞用の器を作るのが美術や芸術だとしたら、工業大学では、生活の道具である器をより使いやすくするにはどうしたらいいのかを科学的に検証し、より機能的で美しいものづくりを目指します。」

 プロダクトデザインを扱う松崎研究室のもとには、より付加価値の高い商品を開発しようとする企業からの依頼も多い。

 例えば、開閉が自動でできる折り畳み傘。傘が自動に開く際には外側に引っぱる力が、閉じる際には押し込まれる力が大きくかかるため、従来の折り畳み傘の細長いグリップでは使い勝手が悪かった。そこで、さまざまな形状や大きさのグリップを試作、大きな力がかかっても滑らないよう膨らみのある形状のグリップが製品化された。

 ロールタイプの付箋紙を開発した企業からの依頼は、デスクに置いたまま使える専用のカッター台。従来のセロファンテープ用のカッターでは、付箋紙が滑ってカットしづらかった。試行錯誤の末、片手でもカットできるように、特徴的な長い首のデザインが完成。カラフルなテープが良く見えるよう、ホルダー部分にも気を配った。

自動開閉できる折り畳み傘。後ろに並んだ白いグリップは、3Dプリンタで作った試作品の数々。
ある企業の依頼を受けてデザインした付箋テープのカッター台。片手でもきれいにカットできるよう試行錯誤を繰り返した。

 

3Dプリンタで試作品づくり
 かつては図面を引き設計図を描いて型を取るなど、試作品を作るまでにはたくさんの工程が必要だったが、「最近は3Dプリンタを使うので、以前に比べてより短時間にいくつもの試作品を作れるようになりました」と松崎教授。「その楽しさは、小学校の工作に似ているかもしれませんね。」

 卒業制作では学生一人一人がテーマを決めてひとつの作品を仕上げる。「より使いやすい製品を作るためには難しい計算式も知っていた方が良いけれど、それがすべてではありません」と松崎教授は言う。大切にしているのは、研究室でのディスカッションだ。「一人でじっとこもって考えていても、アイデアの面白さに気付かないこともあります。仲間とのディスカッションを通してじっくり考え、そこから生まれたアイデアやひらめきを形にして、試行錯誤を繰り返す。その楽しさを、より多くの学生にぜひ体感してほしいですね。」
—————————————————

先進工学部 未来ロボティクス学科 南方英明准教授

 入学直後からロボットづくりを体感

千葉工業大学先進工学部の未来ロボティクス学科は、講義式の授業だけでなく、ロボットづくりを体験しながら工学的な考え方を学んでいこうという学科だ。さまざまなカリキュラムが用意され、入学直後からロボットづくりに挑戦できる。

自律移動型サッカーロボットで世界優勝
 そのひとつが、学生主体となって行うロボカップサッカー・ヒューマノイドリーグへの出場だ。ロボカップとは、自分で考えて動く自律移動型ロボットによる世界的な競技会。同大では研究室の枠を超え、学部1年生から興味のある学生たち約30名がサークルのように活動し、サッカーロボットづくりに取り組んでいる。昨年はブラジル世界大会のキッドサイズ部門で優勝、今年も国内大会ではすでに優勝し、7月に中国で行われる世界大会に参加する予定だ。

 ロボットを動かすためには、プログラミングや電子回路など幅広い知識が要求される。「競技に勝つためには、メンバー全員が、全体を理解していなくてはなりません。その上で、自分はこれが得意だという分野を持つことが大切です」と、学生の活動をサポートする南方英明准教授は言う。

 南方准教授の研究室では、坂道を楽に歩けるようにするシューズなど人間支援のための装置やドローンの横風安定装置といった移動体の安全技術などについての研究を行っている。研究室で開発された人間支援の装置が、サッカーロボットの省エネシューズとして応用されたこともあるそうだ。

「何のためのロボットか」を明確に
 「ロボット」という言葉から人型をイメージする高校生も多いかもしれないが、「ロボット開発では、外見よりも、何のためのロボットかを明確にすることが大切です」と南方准教授は強調する。ロボットが『目的』を果たすためには、どのように動くべきかを考え、実行させなくてはいけない。そのためにはプログラミングや電気回路などの知識が必要で、その基礎となるのが高校の数学だ。「ロボットづくりに憧れる高校生は、特に『行列』を学んでおくと良いですよ」と南方准教授はアドバイスする。

 また、過去に行われた同じような研究から、新たな技術が生まれることも少なくない。世界各国の研究論文を読むためには、英語力も大切だ。「過去の論文を洗い出したり、実験方法を考えたり、検証するのはかなり根気のいる作業です。ロボットづくりは想像するより地味かもしれませんが、結果が出るまでコツコツがんばってほしい」と南方准教授は学生にエールを送る。

*ロボカップ…ラジコンのような人の操作によって動くロボットではなく、自分で考えて動く自律移動型ロボットによる世界的な競技会。「西暦2050年までに、人間のワールドカップサッカー優勝チームに勝てる自律移動のヒューマノイドロボットのチームを作る」ということをテーマに、人工知能やロボット工学の研究を推進し、様々な分野の基礎技術として波及させることを目的としたプロジェクト。

 

 

 

工 学 部 機械工学科/機械電子創成工学科/先端材料工学科/電気電子工学科/情報通信システム工学科/応用化学科
創造工学部 建築学科/都市環境工学科/デザイン科学科
先進工学部 未来ロボティクス学科/生命科学科/知能メディア工学科
情報科学部 情報工学科/情報ネットワーク学科
社会システム科学部 経営情報科学科/プロジェクトマネジメント学科/金融・経営リスク科学科


〒275-0016 千葉県習志野市津田沼2-17-1 TEL.047-478-0222(入試広報課) 
FAX.047-478-3344 E-mail:cit▼it-chiba.ac.jp(▼を@に変えてください)

URL : http://www.it-chiba.ac.jp/
Smartphone Site : http://www.smp.it-chiba.ac.jp/