高専では発光ダイオード(LED) を光らせるための装置を作ったり、電磁波の研究をしたりした

チームラボ株式会社は、エンジニアやデザイナーなど高い専門技術を持つ人が集まった「テクノロジスト集団」。最先端技術と芸術の境界を越え、人々を「ワクワク」させる製品やサービスを次々に生み出す。平田良太さんは、電子回路などの設計を担当するハードウエアエンジニアとして活躍する。
(文・写真 山口佳子)

 自分で描いた魚がディスプレー上で泳ぎだす作品「お絵かき水族館」や、コミュニケーションを活発にするよう工夫されたオフィスの設計、人間の骨格の動きを再現したスマートフォン(スマホ)用アプリなど、チームラボが提供する製品やサービスは多岐にわたる。科学、テクノロジー、アートなどの枠組みを超えた「ものづくり」に取り組み、国内外で、これまでにない製品を生み出している。

チームで仕事をする面白さ

 平田良太さんが同社に出会ったのは20歳のころ。工業高等専門学校の専攻科で学びながら、同社のインターン生としてスマホ用アプリなどソフトウエア開発を担当した。もともと、ものづくりが好きだったが、「1人で取り組むことが多かったので、チームでの作業が新鮮でした」と振り返る。

 「1人でできるのはささいなことなのに、チームのメンバーの技術やアイデアと一緒になると、想像以上のものができる。もっと、いろいろなことをやってみたいと思いました」

最先端の製品も手作業から

 高専卒業後に入社した平田さんが、ハードウエアエンジニアとして初めて関わったのが「チームラボハンガー」のプロジェクト。このハンガーに掛けられた洋服を手に取ると、店内のディスプレーに信号が送られ、コーディネートなどの画像が映し出されるシステムだ。

 試作段階では、全てチーム3、4人のメンバーによる手作業。基盤を入れるケースの設計から始め、市販のハンガー約100本に基盤のケースや電池を一つ一つ取り付け、試行錯誤して製品化につなげた。

 その後、手に触れると光の色が変わり、音色が鳴り響く「チームラボボール」の開発にも参加。「暗い」「電池の寿命が短い」といった課題を、一つずつ解決した。現在は、人が近づくことに反応して木々が光る「呼応する木々」というプロジェクトに力を入れる。

 どの製品も試作品作りから始めて、1〜2年かけて製品化する。

現場設営は体力勝負

 現場設営も自ら手掛ける。「ボールを膨らませるヘリウムのボンベは重さ50キロ以上。木々のセッティングは、会場が閉まっている夜中にしかできません。体力勝負の仕事ですね」

 それでも「ものづくりが好き」という気持ちは揺るがない。「ここで働いていると、新しい技術をどんどん学べる。この技術をどこで生かそうかと考えるのが、何よりも楽しい」

 

 

企業データ
チームラボ株式会社
 2001年、東京大学と東京工業大学の大学院生・学部生が中心となって創業。「ウルトラテクノロジスト集団」と称し、プログラマー、エンジニア、数学者、建築家、CGアニメーター、デザイナー、絵師、編集者など、さまざまな分野のスペシャリストが勤めている。「実験と革新」をテーマにアート、サイエンス、テクノロジー、クリエイティビティの境界を越えたものづくりを手掛ける。従業員400人(2015年6月現在)。平均年齢は29歳。求める人材は「答えが決まっていない問題に対して自分で答えを見つけられる人」と採用担当の藤井見空さん。