北海道札幌旭丘高校の合唱部は全国大会の常連だが、練習は週3回、1日の練習時間は1時間半余りと意外に短い。和気あいあいの練習と校外ステージへの積極的な出演で育んだ歌声で、昨年の全日本合唱コンクールで頂点に輝いた。(文・写真 岡崎敏)

昨年10 月、全日本合唱コンクール(鹿児島)の高校部門Bグループ(33 人以上)で文部科学大臣賞を獲得した。伸びやかで張りのある響きとハーモニーの美しさ、高い音楽性などが評価された。

放課後の音楽室を訪ねると、歌声にまじり、笑い声も聞こえてくる。高校から合唱を始めた部長の川筋美羽さん(2年)は「練習時間が短いから、喉をつぶさず集中して楽しく歌えます」と話す。

合唱経験者や音大を目指す部員もいるが、3分の2以上の部員は「面白そうだな」と入部した未経験者。経験者と初心者が共存し、楽しんで練習を積むうちに全国レベルの力を付ける。

 

顧問の大木秀一先生は「15 分に1回は笑わせる」と、練習中によくギャグを飛ばす。川筋さんも「笑いを取り入れて、楽しい部活にしたい」と雰囲気づくりに努める。仲の良さは抜群だ。

初心者が多いゆえのエピソードも数々ある。昨年の全日本合唱コンクールでは、文部科学大臣賞が1位相当であることを知らない部員が多かった。当時の部長・小山紗輝さん(3年)は「特別賞の発表の時、最初に呼ばれたので3位だと思ってうれしくて泣いちゃったんです。その後、1位だと聞いて、もっとうれしくなった」と笑う。

 

 校外のステージへの出演にも積極的だ。大木先生は「人前できちっと歌うと、1回の本番が10 回ぐらいの練習に相当します」と話す。小田惇季君(3年)は「演奏会が多いと、本番の経験を積んだだけ、緊張しなくなります」と言う。

今年の夏、世界の音楽家が参加するパシフィック・ミュージック・フェスティバル(札幌などで開催)への出演が決定。来年3月にはイタリアでの親善合唱交流に参加する。「2年連続日本一になるように頑張りたい」(小田君)、「お客さんが泣いてくれるまで感動させたい」(小山さん)と、部員の意欲は高まるばかりだ。