走行している車が衝突したときの衝撃は、私たちが思っている以上に強烈で乗っている人は肉体的にとても強いダメージを受けてしまう。そんな時に何よりも求められるのが一刻も早い応急処置。もしも事故の発生と同時に、救急隊や救命救急センターに発生場所や時間、負傷者のけがの程度も推定して伝えることができたら…。西本哲也教授の「バイオメカニクス研究室」は、こうした“ 車の衝突時の安全性”に特化した研究を行っている。 「自動的に事故の詳細を通報することで救急車の素早い到着を可能にし、結果的に効率的で適切な救命救急医療につながる。つまりは『衝突時に乗員をより早く助ける安全・安心な車の研究』です。」と西本教授。その要となるのが「救急救命型ドライブレコーダシステム」だと続ける。

衝突で生じる大きな衝撃=加速度を感知したレコーダは「事故発生!」を瞬時に携帯電話回線で送信。GPSを通じて車の位置と発生時間、家族の緊急連絡先、さらにはあらかじめ登録されたドライバーや同乗者の性別、年齢、血液型や持病の有無、かかりつけの病院名といった治療に役立つデータも提供する。加えてけが人がどれほどの重症度なのかを推定して、事故発生時の車内画像も含めて送信されるという。

「重症度については呼吸数と心拍数という『命』に関わるデータをリアルタイムに自動計測。事故が起こった瞬間の“予測生存率”も含めて送ります。」と西本教授。こうした情報が救命救急医療の質を高めると強調。「詳細な情報があれば、救急隊は出動前に容体を知ることができ、けがのレベルに応じた機器を準備したり処置が可能な病院を探索したり…。少しでも救命率がアップする、より適切な対応が可能となります。」

現在のシステムに至るまでタクシー11台にレコーダを搭載して実証実験を続けてきた。「この期間に発生した約40 件の人身事故と物損事故の生データが重症度を判定する際に活かされています。」 研究室の名前に「バイオ」とあるように、西本研究室のテーマは工学と医学の内容が関連する工医連携分野。実際に救命医療施設である日本医科大学千葉北総病院の救命救急センターとも連携しながら研究を続けてきた。

「研究室は車の安全技術を競う『学生安全技術デザインコンペティション』の国内大会で2年連続で優勝し、米国・ワシントンDCで開催された世界大会にも出場しました。今後は歩行者や自転車に乗った人の救命を対象とした研究へと発展させたいと考えています。医学との連携は、工業高校の出身者にとってはちょっと異色で興味深い分野だと思います。だからこそ、私達と一緒に学んでみませんか?」と西本教授は呼びかける。

 先輩VOICE 

 ●車田和也さん [水戸工業高校出身]

父がF1をはじめクルマが大好きなのでその影響を幼い頃から受けて、機械工学の分野に興味を持ち工業高校から大学へと進みました。現在の研究テーマは、高齢者が安全・安心に乗ることができる小型の乗り物=パーソナルモビリティの開発。研究すればするほど興味と関心が高まり、今後はさらに大学院へと進学して研究を続ける予定です。

●郡司祐太郎さん[郡山北工業高校出身]

幼い頃からものづくりが大好きで工業高校に進みましたが、もっともっと追究したいと思い指定校推薦を受けて本学部に入学しました。研究テーマは車田くんと同じ高齢者用パーソナルモビリティの開発です。今後は自動車メーカーに就職をして、社会の第一線で自分を鍛えながら安全・安心な自動車の開発を目指したいと思っています。 幼い頃からものづくりが大好きで工業高校に進みましたが、もっともっと追究したいと思い指定校推薦を受けて本学部に入学しました。研究テーマは車田くんと同じ高齢者用パーソナルモビリティの開発です。今後は自動車メーカーに就職をして、社会の第一線で自分を鍛えながら安全・安心な自動車の開発を目指したいと思っています。