絵を描くことが好きだったり、写真や映像に興味があったりする。そんな高校生なら一度は美術大学、通称「美大」に憧れたことがあるだろう。とはいえ美大に関する情報は、文系・理系の一般大学に比べて圧倒的に少ない。そのため適性はあっても、進路として美大を検討することのないまま一般大学を受験するケースは多い。まずは美大と美大入試について知るところからはじめてみてはどうだろう。

美大入試への道

絵を描くこと、表現することが好きな人なら一度は美大進学を考えるのでは? そこから一歩踏み出すか否かは、美大入試についてきちんと理解しているかどうかも関わってくる。まずは、美大で何を学べ、卒業後にどんな道が開けているか、そして美大に進学するためにどんな準備が必要か、正しい知識を持ったうえで自分の適性を考えよう。

美術を学べる大学って?

美術を学べる大学と言っても、美術系学部のみで構成される美術大学以外に、音楽などの芸術を含めた芸術大学、総合大学(様々な学問分野が学べる大学)に設置された芸術・美術系学部など進学先は多彩であり、それぞれ特徴がある。

美術・芸術大学は、学生の意識や方向性、大学の環境や施設のすべてが芸術へと向いている。一方、総合大学では、多様な学生、学問分野のある環境で美術に多方面からアプローチする環境にあると言えるだろう。

また、大学や学科によって傾向が異なるが、自由な創作を尊重するところもあれば、就職を視野に、企業との連携プロジェクトなどの実践的な学びを重視するところもある。 自分にあった環境は、自分の求めるものや性格にもよる。美大に進学しても、異なる分野や学外とのつながりを自ら積極的にもつ人や、コツコツと自分の専門を極めて昇華させる人もいる。

いずれにしても、複数の大学を調べ、足を運び、自分の感性に響く大学や先生を見つけることが、よりよい志望校選びにつながるはずだ。 では、実際に美大・美術系学部では何を学べるのだろうか?大別すれば、日本画・油絵、版画などの絵画、木彫・石彫・金属加工などの造形、グラフィック・空間・環境・建築などのデザイン、CGや映画などの映像メディアといった技能的な分野と、学術的な美学や美術史、芸術全般のマネジメントといった理論的な分野がある。

意外に多彩な学問・進路

学問分野からも想定されるように、創作活動を行う作家以外にも将来の進路は多彩だ。出版・広告物を主に活躍するグラフィックデザイナー、ディレクター、イラストレーター、工学との関わりが強い工業デザイナーや建築デザイナー、最近ではゲーム・アニメーションのクリエイターも目立つ。学科にもよるが、教員への道や、文化財の修復や美術館のキュレーターといった、注目の職業も選択可能だ。

 美大の目指し方

美大入試ではどの学科でもほぼ実技試験を課す。共通するのは石膏像や静物などのデッサンだ。他にも油絵やデザイン、着色写生、塑像、立体構成など学科ごとに異なる実技試験があり、大学ごとに出題傾向もある。

独創的な発想と共に、「指定時間内に、出題意図と与えられた条件を正確に把握し、仕上がる力」が求められるため、過去に出題されたモチーフを練習する必要がある。

有効な手段としては、美術系予備校に通うことが挙げられる。美大受験のノウハウをもった講師の指導だけでなく、他の受験生と同じ俎上で作品の講評を受ける体験は大きい。予備校に通うのが難しい場合は、美術の先生に相談し、指導してもらうのもひとつの手だ。

また、美術系にも学科試験はある。主に外国語と国語だが、美術系予備校内で学科試験対策を行っているケースも多いのでチェックしておこう。