外務大臣賞

「日本における難民問題」

関西学院高等部 3年 半田 翔也

 

「1950万人」。この数字を見て、あなたは何を思うだろうか。ある人は、こう言うかもしれない、「訪日外国人の数」。そしてまた、ある人はこう言う、「世界の難民の数」。若干の誤差はあるが、両方正解である。そして、前者は、希望をもって国を出た人であり、後者は絶望と不安をもって国を出た人である。

「27人」。では、この数字はなんであろう。昨年の日本の難民認定数である。7586人の難民申請者中、27人しか日本は許可を与えなかった。率にして0.35%。世界平均が約30%であることを考えると、その異常さが浮き彫りになる。お金を持った裕福な外国人はウェルカムだが、人生のどん底にいる難民は受け入れない。こんな状況で、日本は「思いやりの国」と言えるのであろうか。

私は世界中で高まりを見せている、難民問題に関心を持ち勉強を重ねてきた。難民問題を知れば知るほど、日本が難民に対して厳しい国であることを思い知らされる。低すぎる難民認定率も問題であるが、難民申請が長すぎるというのも日本における難民問題で無視できない点である。日本では難民申請をしてから、その判断が下されるまでに2~3年かかる。その間、申請者は難民ではないため、難民としてのサービスを受けることが出来ない。僅かの家賃補助や生活支援金は支給されるが、日本語も読めない申請者がそのサービスがあることを自力で知るのは至難の業で、実質利用されていないのが現状である。

昨年、大阪市内の天人というカフェを訪れた。ここのオーナー西尾純さんは、積極的に国際協力を行っていることで有名である。西尾さんは、その一環として、難民申請中の人を自身のお店で雇っている。金銭的な支援以上に、日本という異国で苦しむ難民の居場所を作りたいとおっしゃっていた。

日本の難民問題の根本的な問題は、制度的な問題以上に、西尾さんが言うように、難民の居場所がないということだ。朝日新聞が昨年12月に行った調査では、「日本は難民を受け入れた方がよいと思うか」という質問に対し、58%の人が「そう思わない」と答え、24%の「そう思う」という人の数を大きく引き離した。このデータが示すように、日本の世論自体が、難民に対して否定的なのだ。それゆえ、国の政策も難民に厳しくなってしまう。つまり、根本的に日本の難民問題を解決し、日本を真に「おもてなしの国」にするには、国民一人一人の意識を変えることが必須なのである。

そこで私は今年の6月にMeal for Refugeesという取り組みを学校で実施した。これは、学校の食堂で難民の故郷の料理を提供し、日本における難民周知を行うとともに、寄付金を集めるという活動である。全国のいくつかの大学では実施されていたが、高校での実施は全国で初めてだ。選挙権が18歳に引き下げられ、一部の高校生も国の政策に影響を与えられるようになった。高校生が難民問題に関心を持つことは、非常に意義あることだ。食堂の規模を鑑みて、わが校では、パキスタンの郷土料理である、まろやかチキンカレーと中東のカナンのココナッツミルク白玉を提供した。事前の宣伝が功を奏し、1週間で、のべ124名の方にカレー、白玉を提供できた。特別メニューを購入してくれた生徒に話を聞くと、一人の生徒が、「難民は遠いヨーロッパの問題だと思っていたけど、身近な問題だと感じた」と答えてくれた。

子供ではなく、大人でもない、私たち高校生が、世界のために出来ること。それは想像することだと思う。世界の様々な問題に思いをはせ、そして行動する。高校生がすることなんて、小さなことだと人は言うかもしれない。しかし、その小さな一歩こそが、世界を変える大きな一歩となるのである。

旅行客と難民を等しく受け入れるような国。そんな国に日本がなれるように思いをはせ、このエッセイの最後とする。

 

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