高校生事業家の金安塁生君(清水撮影)

都立中等教育学校5年の金安塁生君は、日本で唯一「高校生事業家」の肩書を持つ高校生だ。中高生や社会が抱える問題を、高校生の視点を介したビジネスで解決しようとしている。
(高校生記者・清水魁星、堀越理菜)

1年前は普通の高校生だった

金安君は、高校生でありながら、ある企業の役員であり、社会人と対等な立場にある。高校生独自の視点で企画を提案したり、経営状態をチェックしたり、アプリなどの製品プロデュースをしたりする。現在は、部活などで忙しい高校生のために、いつでも好きな時に塾の授業を受けられる映像配信事業に携わっている。
 1年前までは、ごく普通の高校生だった。しかし、ある先生に勧められて「日経ストックリーグ」(中・高・大学生を対象にした、株式投資と金融・経済を学ぶ学習プログラム)に参加したことが彼を変えた。プログラムで制作した、投資に関するポートフォリオが高校部門の最優秀賞に輝き、企業にその能力を買われて高校生事業家の第一歩を踏み出した。

勇気を持って踏み出そう

彼が事業(ビジネス)に取り組むのは、社会の問題を解決するためである。
 「討論やコンクールでは何も変わらない。人に幸せや喜びを提供することが、問題解決の第一歩だと信じています」(金安君)
 今後は「なぜ中学、高校で6年間勉強した英語を話せないのか」「どうして大学入試が高校生のゴールになってしまうのか」といった高校生にも身近な問題も、ビジネスで解決したいと考えている。
 現在は、高校生という立場を生かして事業を行うが、「『世代×ビジネス』を合言葉に生涯事業を続ける」と話す。
 高校生事業家として、日本の高校生をリードする「模範」となろうとしている金安君が、伝えたいことはただ一つ。
「将来の自分を想像し、今すぐ一歩を踏み出そう」

高校生事業家 金安塁生君との一問一答

—なぜ「ビジネス」をするのでしょう?

ビジネスは「目的」のための「手段」に過ぎません。私の目的は社会の問題を解決する事です。ビジネスという手段によって、お金ではない本当の価値、人の幸せや喜びを提供する事が「社会の問題を解決する」第一歩だと私は信じています。お金が目的でビジネスをやっているわけではありません。だからと言ってお金が不要なわけではありませんよ。中長期的なビジネスのために、また支えてくれる人のためにもお金は不可欠です。しかし、ニーズを満たせばお金は結果的に生じるので追い求めません。

―大切にしていることはありますか?

人との出会いは大切です。なぜなら出会いは対話へと発展します。そして、対話する関係は信頼を生み、やがて一国をも変えるからです。学校に限らずビジネスやスポーツといった分野にいる「先生」から、蓄積や経験を聞き、学び、そして間違いを正してもらう、これは学生の仕事であり、義務です。人生の先生となるような大人と学生を繋げるような仕組みを作りたいですね。

―今後は何をしていきたいのでしょうか?

塾の授業の映像配信事業に加え、キャリア教育を映像で提供したいと考えています。キャリア教育を行い人生の目的を探しつつ、受験勉強を行う。これこそ正しい高校生のあり方であるはずです。私は高校生であるという強みを生かし、中高生のニーズを満たすような事業を行っていきたいです。

取材後記
自分は何をやりたいか金安君のすごいところは、事業家になったこと以上に「人生の目的」がはっきりしていることだと思う。目的を果たすために、彼は事業家になる道を選んだ。では、自分は将来何がしたいのか。人生の目的を見つけることは容易ではないが、彼のインタビューにはヒントがたくさん込められているように感じた。 (堀越)