厳しいマークにもひるまず打ち抜いたエースの黒後愛

第69回全日本バレーボール高校選手権(春高バレー)の決勝が1月8日、東京体育館で行われた。女子は下北沢成徳(東京)が就実(岡山)をストレートで下し、2年連続4度目の優勝を果たした。(文・田中夕子 写真・幡原裕治)

ライトから高い位置で捉えたフェイントボールが、レシーブの乱れを誘い、就実のコートにポトリと落ちる。下北沢成徳の連覇が決まった瞬間、エースの黒後愛主将(3年)は両手で顔を覆った。「全然決められなくて、チームを引っ張るどころか、周りに助けてもらった。みんなのおかげで勝てました」

ブロックよりもレシーブ練習

黒後を筆頭に山口珠李(3年)や堀江美志(3年)、石川真佑(1年)ら攻撃力の高い選手がそろい、連覇は盤石かと思われたが、就実、鹿児島女など「打倒成徳」を掲げるライバルたちは守備力を磨いてきた。昨年は下北沢成徳がブロック力で他校を圧倒したが、それだけでは勝てない。「ブロックよりもレシーブ練習に力を入れた」と堀江が言うように、今大会はリベロの岩沢実育(2年)を中心に、高いレシーブ力も発揮。つないだボールはセッターの山崎のの花(3年)がつなげ、勝負どころは黒後が決める。それが今大会の必勝パターンだった。

スパイク、ブロックで活躍した山口珠李。チームの総合力で就実に勝った
リベロの岩沢実育を中心に守備力が光った

仲間を信じて勝てた

しかし、連覇の重圧からか、決勝は黒後のスパイクが就実のブロックに阻まれる苦しい展開が続く。だが、下北沢成徳の攻撃は黒後だけではない。堀江、山口がブロック、スパイクで次々得点を挙げ、石川も「春高の中で一番いいプレーができた」と言うように、高いトスをコースの奥やサイドラインギリギリの難しいコースにたたき込み、就実を突き放す。

就実もミドルブロッカーでチームの得点源である小川愛里奈(3年)を中心とした攻撃で食い下がる。しかし、最後に勝負を決めたのは、やはり黒後。「絶対に勝ちたい、勝つんだ、と強い気持ちで打った」というライトからの攻撃が決まり、ストレート勝ちで優勝を手にした。

3年間、共に戦ってきた選手たちと抱き合い、涙を流して喜びを分かち合った黒後は「仲間を信じて、最後に勝てて本当によかった」と笑みを浮かべた。

(チームデータ)
1951年創部。部員32人(3年生13人、2年生4人、1年生15人)。春高は2002年、03年に連覇。16年インターハイで優勝。木村沙織や荒木絵里香、大山加奈ら日本代表選手を多く輩出。

春高バレーを連覇した下北沢成徳