健康だと思われていた人が、突然心臓に異常をきたし亡くなる「心臓突然死」。「女性にAEDが使われる率が男性に比べて低い」と知った大谷高校(大阪)の1年生4人が、女性に対しAEDを使いやすくするためのグッズ「まもるまる」を作った。山下結子さん、椎原彩葉さん、早田愛菜さん、松村美優さんに制作秘話を聞いた。(野村麻里子、写真は本人提供)

女性のAED使用率を上げたい

――「まもるまる」の使い方、特徴を具体的に教えてください。

「まもるまる」は、縦100センチ、横63センチの大きさで、上方に十字の切り込みがある長方形のシートです。

使用方法は、まず倒れた女性の頭を十字の穴に通し、かぶせます。横から服をつまみ、まもるまるに書かれている矢印の方向(上)に服をたくし上げます。AEDの電極パッドを襟、横から差し込み、体に直接貼ります。そして電気ショックを実行するという流れです。

まもるまるを作った大谷高校の4人

これらの説明や胸骨圧迫の位置・電極パッドを貼る位置は、誰が見てもすぐに分かるように簡易的なイラストでまもるまるに記載してあります。

救命処置をする方は倒れた女性の体を見ずに、ためらいなく、AEDが使えるのです。救命の知識のない一般の方が処置をする際に使っていただくために作りました。

まもるまる

7分半に一人が心臓突然死で亡くなっている…

――心臓突然死と女性のAED使用率に注目した理由は何ですか。

私たちは、「inochi学生プロジェクト」という活動に参加しています。中高生や大学生が、健康についての問題をテーマに課題解決を目指してワークショップや講義を受け、考えたプランを実行して、その成果を発表する取り組みです。今年のテーマは、「私たちが減らす、心臓突然死」です。

この活動を通して、7分半に1人が心臓突然死で亡くなっていると知りました。さらに女性のAED使用率が男性より低いという問題があると聞きました。

調べていく中で、これは「女子」高生である私たちが解決していくべき課題だと確信していったのです。少しでも悲しむ方々を救いたい。その思いを胸に、解決策を全力で考えることを決意しました。

高校1年生の半年間を、この活動に費やしました。毎日毎日、どうすれば一人でも多くの人々を救えるのか、ずっと考えていました。

そして、inochi学生プロジェクトの参加者たちによるプレゼンテーションでまもるまるを発表し、勝ち抜き、若者たちの未来や健康について考えるイベント「inochi Gakusei Mirai Forum 2019」(11月開催)に登壇しました。

日が暮れるまで開発続けて

――松村さんが活動してきて、一番思い出深いできごとは何ですか?

まもるまるのプロトタイプを作成していた時です。

夏真っ盛りで、日が落ちるのは遅いはずなのに、外が真っ暗になるまで試作をしていました。夏休み中も、部活が終わってから教室に行ったり、休みの日も集まったりして頑張っていたのを今でも覚えています。

まもるまるを作るためにビニール袋で試行錯誤
 

遅くなりすぎて、学校の守衛さんにちょっぴりしかられたこともありました。メンバー全員がうめき声をあげながらペンキを塗ったのは今でも覚えています。

それでも、完成したときは全員で叫んで喜びました。あの時の達成感は計り知れないものがありました。

――山下さんは、深夜の電話ミーティングが思い出深いそうですね。

プレゼンで使う、まもるまる紹介のスライド作りにいそしんでいた時のことです。

夜中の4時までずっと通話をつないでいました。「眠たい」「しんどい」と愚痴をこぼしながらパソコンを打つのは、とてもつらかったです。でも、雑談をしたり、夜中ならではの変なテンションで大笑いしたり……。

こんなに友達と長い時間を密に過ごしたのは初めてだったので、みんなのことを同じ目標をもつ仲間として大好きになりました。電話でのミーティングは毎晩ほとんどやっていました。

どうやれば女性に配慮し、ためらいなくAEDを使えるかを考えた

厳しい意見や反論…電話に苦戦

――山下さんは、企業に電話することに苦戦したそうですね。

私は話すのが大の苦手。まもるまるを実際に使ってもらえるようするにはどう改善すればよいか、企業にヒアリングするため、つたなくも電話をしたことが一番苦労しました。

それでも大人の方々は優しく、私のたどたどしい説明をちゃんと聞いてくださいました。

多くの企業に電話をかけても良いお返事がいただけるのはせいぜい1社ほど。「服を脱がさなくてもAEDは貼れる」「AEDは認定されたものだからこちらでは判断できない」と厳しいご意見や反論も頂くことがありました。

涙がでるほど悔しく、自分が子どもであることを憎むこともありましたが、希望を捨てないように、「次に電話をかける会社は、まもるまるに興味を持ってくれるかもしれない」と、明るい未来を想像しながら頑張りました。

試作品を作って使いやすいよう工夫した
 

「発表するなら死んだほうがマシ」だった自分が変われた

――椎原さんは、活動を通して気づいたことがあるそうですね。

実は私は、「人前で発表するくらいなら、死んだ方がマシだ」 と思うくらい、人の前でなにかを話すことが苦手だったし、嫌いでした。

少し前までそんなだった私が、多くの方々の前でプレゼンテーションなんてしているものだから、本当に驚いています。ここまで人が変われるなんて、思ってもいませんでした。

ここまで変われるほど頑張れたのは、大切なメンバーたちのおかけだと思います。つらかったりしんどかったりするときに、いつもメンバーが話を聞いてくれました。私は泣き虫で、すぐ泣きそうになって。

でも、面倒くさがらずにいつも励ましてくれました。これまで、こんなにすてきな友人が近くにいたのに気付かなかったことに、あきれそうなくらいです。

私は人と接するのが下手くそです。いつも人前に出るのが恥ずかしくて、黙りこくってしまうのがすごく嫌で…もっと恥ずかしくなって。そんな自分がずっと嫌でした。

でも、そんな私を、先生や私たちの案に賛同してたくさんお世話になった企業の方々が、背中を押してくれました。そんな私が、こんなに人間関係に恵まれた環境にいることに、今はとても感謝しています。

その大切さに気付けて、今までよりもっと、家族や友達が大好きになりました。それが一番の変化です。

一瞬の勇気が一生の自信に

――全国の高校生に伝えたいことはありますか?

私たちのような、いつもはふざけてばかりいる高校生でも、興味のある課題を見つけて、自分たちで磨いた解決策を持ったら一転、全員が心臓突然死のことばかり考えて、いつも話題が「まもるまる」になるくらい熱中していました。何か少しでも心に触れるものがあれば、その世界に飛び込んでみることが大切だと思いました。

それは人生を変えるような経験になるかもしれませんし、ならないかもしれません。ですが、「やらなかったから生まれた後悔」より「やってみたから生まれた後悔」のほうが絶対に価値があるのではないでしょうか。

一瞬の勇気が、一生の自信につながることもあるかもしれません。

全国にまもるまるを広めたい

――早田さんが考える、これからの活動の展望を教えてください。

女性と男性でのAEDが使われる率の差を埋め、男女ともへのAEDの使用率を100%にしたい。まもるまるで、救命への邪魔へとなってしまう、使用への無駄な抵抗感を取り除きたいと思っています。

これからはまもるまるを全国のAEDと共に広げていき、性別を超えた救命活動ができる世の中にしていきたいと思っています。