外国語学部と聞くと、語学だけを勉強するイメージが持たれがち。語学はもちろんだが、地域研究も行い、多言語・多文化に囲まれながら、柔軟なコミュニケーション能力が身につけられる。東京外国語大学言語文化学部長の山口裕之教授に、教育内容について聞いた。(安永美穂)

語学を生かす以外の道も

――卒業後の進路は?

自分が専攻した言語を使う仕事に就く人もいますが、専攻語とは直接は関係のない仕事に就く人も多くいます。一般企業の場合は、メーカー、情報通信会社、商社、旅行会社、航空会社、マスコミなど、職種はさまざまです。外務省をはじめとする各省庁、各自治体などで公務員として働く人もいます。

ネーティブの教員によるロシア語の授業(東京外国語大学提供)

外国語学部の卒業生は、外国語能力の高さから即戦力として期待される面もありますが、それ以上に、「多言語・多文化が当たり前」という環境で学んできたからこその、柔軟な適応力やコミュニケーション能力があることが強みだと評価されることが多いようです。

受け身の姿勢ではNG

――外国語を生かした仕事に就くには、どうすればよいのでしょうか。

海外に支社がある企業などで働くのも一つの方法ですが、大企業の場合は自分の専攻した言語・地域とは異なる地域を担当する部署に配属されるケースも想定されます。

専攻した言語を生かした仕事に就きたいのであれば、受け身の姿勢でいるとなかなかチャンスには巡り合えません。「これをやりたい」という目標を明確にして、海外でのインターンシップに参加するなど、自分から行動を起こすことが重要です。

なお、一般的には専攻する人が少ないマイナーな言語の方が、その言語のスペシャリストを必要とする企業や専門機関などからの採用ニーズが高いということもあります。

※今回の記事では一般的な名称として「外国語学部」としているが、東京外国語大学は言語文化学部・国際社会学部・国際日本学部の三つの学部で構成されている。

山口裕之教授(東京外国語大学言語文化学部長)

 

やまぐち・ひろゆき 広島大学附属高校卒業。東京大学教養学部卒業。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位修得退学。博士(学術)。専門はドイツ文学、表象文化論、メディア理論。ベルリン自由大学に留学した経験を持つ。