文部科学省は10月29日、2015年度の新設大学・学部・学科の審査結果を発表した。新設大学は、私立の3大学(3学部)、新設学部は私立17大学の17 学部(短期大学除く)、新設学科は私立6大学の6学科を認可した。(協力:大学問題アナリスト 野澤和範)
※2014年10月29日現在の情報をもとに作成。2015年4月に開設される大学・学部・学科等は開設時期や名称、内容等が変更されることがあるので、募集内容詳細については、各大学に直接問い合わせること。

★2015年度、注目の学部は?

看護ラッシュとなった2014年度に引き続き、2015年度も看護系学部・学科の新増設が目立つ。私立大学の看護系学部の新設(新設大学含む)は10大学10学部。学科を含めるとそれ以上にのぼる。なかでも目を引くのが、神奈川工科大学の看護学部増設だ。昨年度も足利工業大学、北海道科学大学など、工業系の学部を持つ大学に看護学部が誕生している。
 その他、2015年度に増設される学部は観光コミュニティ学部、国際教養学部、スポーツ健康科学部、こども教育学部など近年人気の学部が目立つ。そんななか、龍谷大学の農学部増設は注目度が高いだろう。農学部はもっぱら国立大学のシェアが大きく、私立大学で農学部を設置しているのは6大学のみである。龍谷大学農学部の場合、植物生命科学科、資源生物科学科、食品栄養学科、食料農業システム学科の各学科での構成を目指し、農学はもちろん「食」や「栄養」といった幅広い視点での学びを目指しているようだ。
 一般的に新設大学・学部の入試では、文部科学省が発表する認可の時期との関係で、指定校推薦や大学入試センター試験を活用した入試方式は実施できない。そのため多くの私立大学では、11月以降に公募推薦入試を行う場合があるので、志望大学がある場合は、各大学のウェブサイトなどでしっかり確認をすること。

★新設大学・学部・学科ってどうやってできるの?

大学は、国立はもちろん都道府県などが設置する公立大学、学校法人が設置する私立大学も自由に開設することはできない。新しい大学、学部、学科を設置するためには、文部科学省に申請し、学校教育法に定める大学設置基準に則した厳しい審査を受け認可されなければならない。2015 年度の新設大学としては、私立の湘南医療大学(横浜市)、長野保健医療大学(長野市)、鳥取看護大学(倉吉市)の計3校が認可された。一方、一定の条件を満たす場合には上記の厳しい審査を受けることなく、文部科学省に届け出るだけで学部・学科を新設することもできる(届出制)。これに当たる学部新設が公立1 大学、私立21 大学、学科新設が私立27 大学の届出が受理されている(8月末まで)。届出は12月まで受け付けられるため今後増える可能性もある。これらの情報は文部科学省のウェブサイトで公表されているので、一度チェックしてみるとよいだろう。

新設の大学・学部・学科だからこそ感じる疑問や不安を解決しよう! 新設Q&A

情報収集はどうしたらいい?
新設の場合、先輩の口コミ情報も、進路指導室に蓄積した情報もない。気になる学部・学科があれば、まずはその大学のホームページを調べてみよう。疑問や不安はそのままにせず、資料を取り寄せたり、直接大学に問い合わせるなどして解決しよう。

就職実績がなくて大丈夫?
就職実績がないといっても、既存の学部・学科を土台にした改組であれば、就職先とのパイプは少なからずもっている。また、特殊な職種でない限り、企業が学部・学科を指定することはない。むしろ新しい学部・学科で、先陣を切って学んだことをアピールしよう。 注意したいのは、資格取得に必要な実習先が十分用意されているかどうかだ。看護系なら病院など、提携先の有無を調べることが肝要だ。また、キャリア教育に関するカリキュラムも、実績のある大学と比較してみるとよい。

新設大学・学部・学科のメリットは?
その時代に求められているから新設する。つまり、社会で需要があり、就職にも有利になると考えられる。また、伝統ある大学・学部・学科とは逆の魅力として、学生が教職員と一緒にゼロから伝統を育てるという楽しみがある。チャレンジ精神旺盛な高校生にはぜひトライしてほしい。