国際協力特別賞
世界の幸せのために私たちができること
鹿児島県立川辺高等学校2年 今村心美

 

日本に生まれた私は毎日幸せに暮らしている。この幸せは、日本が先進国であるから生まれるものだろうか。本当の幸せとはどのようなものだろう。

私はこの夏、鹿児島県青少年国際協力体験事業に参加し、約一週間発展途上国であるスリランカを訪れた。四日間のホームステイでスリランカの日常を体験した。シャワーは屋外にあり冷たい井戸水なので、現地の方々は昼間に入っていた。エアコンも無くトイレも水洗式でなく、最初は日本と異なる生活に多少の不便さを感じた。しかし、この生活はスリランカ人にとって当たり前の日常であった。日本にあるものでもスリランカにはなかったが、いつも家族同士仲良く楽しそうに暮らしていて、不足は無い様に見えた。この生活環境を日本の環境と比較して論じるのはあまり意味がないように感じた。また、ホストファミリーのおかげでスリランカの生活に慣れたが、日本でどれだけ便利な道具に頼っていたかを体感した。国際協力活動においても、足りないから与えるという活動は間違った支援だと思うようになった。

研修中、保健所で働く青年海外協力隊の方のお話を聞く機会があった。スリランカでも生活習慣病が問題視されていた。油で揚げた甘いお菓子とともに、何杯もの砂糖を入れた紅茶を飲む文化があり、一日に何度もこのようなお茶の時間がある。さらに、食事の時に野菜をあまり食べないため栄養に偏りがあるそうだ。また「分かっているけど時間が無い」と運動を避けてしまう現状もある。スリランカでは、医療費は無料だが四・八秒に一人が亡くなっている。食習慣が原因となり命を落としてしまう人は多い。専門的知識のある保健師の方々の発展途上国への派遣は、今後も必要であると感じた。しかし、健康に過ごすための生活習慣を受け入れてもらうには、古くからの文化を変えるということにもなり難しいことでもある。生活習慣や食習慣は、その国に住む人々の大切な文化である。その国の文化を尊重しながら、健康が維持でき元気で暮らせる生活づくりをすべきだと思う。

スリランカで約一週間過ごしてみて、言葉は通じなくてもホストファミリーの優しさや家族の絆に触れ、最終日はこの地にとどまりたいと思った。以前の私は、発展途上国と聞いても興味は無かったが、今ではテレビ番組やニュースで、スリランカや発展途上国のことが放送されると釘付けになって見るようになった。私も将来、発展途上国の地に赴き、現地の方々と共に生活し働きたい。そう思うようになったのも、スリランカを訪れ多くの方々に出会えたからだ。また、発展途上国のゴールとは決して先進国の様になることでは無いのではないか。経済発展や健康維持などはあくまで手段であり、現地の方々の生活が充実し自国の文化を尊重しながら、心身ともに健康で暮らせることがゴールであると思う。経済的状況が発展の基準となるのではなく、自国の文化や習慣などに合わせた発展が世界の幸せにも繋がると言えよう。また、その支援を行うことが先進国の使命でもあると感じる。

世界の幸せのために私たちができること。私たち若い世代が日本や自分たちのことだけ でなく世界を知ることだ。私もスリランカに行くまで、世界で何が問題になっているのか、発展途上国の現状はどうなっているのかなどほとんど知らなかった。世界情勢に興味を持っている日本の若者はどのくらいいるだろうか。日本ばかりを見ていても世界の現状は変わらない。世界に目を向けることで、何をすべきなのかを見つけられると思う。まずは、これからの社会を担う私たち若者から世界を知ることを始めよう。自分の幸せだけでなく、世界の幸せのために。