国際協力特別賞
誰もがインフルエンサー
呉港高等学校 2年 中向井 瞳

 

幸せには様々な形がある。例えば、お金があること。健康であること。人によって異なった幸せの形があると思うが、どれも平和であることは大前提である。世界が平和で幸せであるために、私たち高校生に何ができるだろうか。私は、広い視野を持ち、情報を共有するということが一つとして挙げられると思う。

私は高校一年生のとき、香港に留学した。そこには、アメリカ、タイ、デンマーク、ドイツなど世界の各国から四十人ほど留学生が集まっていた。彼らと交流を深め、様々なことを話し合っていくうちに、気になることがあった。それは私が広島出身だと話すと、

「広島って住めるの?」

と聞かれることが多かったことである。なぜそのような疑問を持つのか理由を聞くと、

「広島に原爆が落とされたことは習ったけど、その後どうなったかは習っていないから。」

と答えてくれた。私は生まれた時から広島に住んでいるので、当たり前のように住める場所だと思っていた。また、オバマ元大統領が広島を訪問され、世界中で核兵器廃絶の動きもあるので、広島に住めないと思う人がいるとは思いもしなかった。そこで私は、簡単にではあるが、私がこれまでに見聞きしてきた広島の復興の歴史について説明した。するとその友人達はすぐに納得してくれた。彼らは帰国後、家族や友達にその話を広めてくれたらしい。今までは当たり前すぎて、誰かに伝えようと思ったこともなかったが、この時に私は対話の必要性と有効性を強く実感した。

そのように広島に興味を持ってくれる友達がいる反面、原爆が落とされた事実は知っていても、

「それは、日本とアメリカの戦争時代の問題だから、私の国には関係ない。私の周りに戦争について話す人なんかいない。」

という友達もいた。その時は語彙力も足りず、うまく反論することができなくて、悔しい思いをした。それと同時に、世代が変わってきている今、若い人たちにとっては、戦争は遠い昔のことに感じられるのも仕方がないことなのかもしれないとも思った。そもそも私自身も戦争や平和について自発的に学んだり、発信しようとしたこともなかった。留学という日常とは違う場でそのような友達に出会ったことで、考えを深めるきっかけになった。

現在私は帰国して、ボランティアとして、日本に来る留学生のお世話をする活動に参加している。先日も留学生たちと一緒に広島の平和学習に参加した。そこで私たちは戦争や平和について意見交換を行った。国が内戦状態で大変だと語る学生もいれば、選挙の投票率が六十%以上と高いので、自分たちの意思で戦争するかどうか決めることができるという国の学生もいた。同じ高校生でも戦争の捉え方は様々だった。しかしその後テーマが変わり、私たちができる平和活動について話し始めた途端、「自分が経験したり、学んだことを周りに伝え、さらにできることを探していく」ということで全員の意見が一致した。国籍や背景の違う学生達が、平和について真剣に話し合ってくれたので、私はとても嬉しく思った。

普段会わないような人たちと接することで新しい発見がある。そしてその発見をもとに、より良い考えを生み出すことができる。様々な人と積極的に交流し、お互いに情報を共有することが、幸せで平和な世界への第一歩になるだろう。私はこれからもこのような活動に参加し、様々な人と関わり、平和について共に考えていきたい。私ができることは小さなことかもしれないが、それが誰かの幸せについて考えるきっかけにもなってほしい。一人が与える小さな影響も、波紋が広がるようにいずれ大きな力になると私は信じている。