人気ゲームアプリ「パズドラ」や「モンスト」などに登場する、イザナキ・イザナミ・カグツチ・アマテラス・ツクヨミ・スサノヲ・・・・・・。このキャラクターたちは、じつは『古事記』に描かれた日本の神々。『古事記』というと難解なイメージがあるかもしれないが、神話や登場人物たちの英雄伝や恋愛物語などは、人間味にあふれ、現代の私たちが読んでも十分に楽しめる。今回は、國學院大學古事記学センターの渡邉卓先生に、『古事記』の登場人物やストーリーをわかりやすく解説してもらった。

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日本の神々がゲームキャラクターに採用

日本の神話についての物語のなかで、一番代表的な作品が『古事記』です。『古事記』は、約1300年前の和銅五年(712年)にできあがった、日本最古の歴史書。西洋のギリシャ神話などと同様に、最近では映画やアニメ、ゲームなどのエンターテインメント作品のモチーフになることが増えています。たとえば「パズドラ」「モンスト」などの人気スマホゲームに、『古事記』に登場する神々が採用されているんです。このあたりは高校生のほうが詳しいかもしれません。また、ジブリ映画もわかりやすい例といえます。『千と千尋の神隠し』で、主人公の両親が食べ物を食べて、豚のようになってしまうシーンがあるでしょう。『古事記』の中にも、神様であるイザナミが黄泉国(よもつくに)の食べ物を食べてしまい、化け物になってしまう場面が出てくるんです。『千と千尋~』という作品自体、神様と人間の関係を描くという点で、日本神話の影響を受けているといえますね。

サッカー日本代表にも関係が?

エンターテインメントの分野だけではありません。例えばサッカー日本代表のエンブレムって見たことはありますか? あのマークに描かれている3本の足を持つ黒い鳥は、八咫烏(ヤタガラス)といいます。この八咫烏も『古事記』に出てきます。

現代の生活の中でも、意外なところに『古事記』や日本神話に登場する神々や動物がいるんですよ。

推しメンならぬ推し神? 身近になってきた日本神話

かつては、教育の一環として読まれていた『古事記』ですが、現在は高校までの授業で、その内容まで踏み込んで学ぶということは少ないかもしれません。その一方で、最近は若い人たちの間にも神社めぐりが流行したり、日本神話がより身近になってきていると感じます。どの神様が好きか、自分の「推し神」がいるという人もいるそうです。だからこそ、読んだことがない人に読んでほしいですね。『古事記』は文字で書かれた神話の世界なので、人によってその受け取り方が全然違うはず。また、神々だけで話が展開する序盤から、初代神武天皇~推古天皇までが描かれる中盤・終盤まで、場面はさまざま。ファンタジーやSF的に読んだり、政治書・歴史書・思想書として読むこともできるんです。読み手が想像力を膨らませて、多様に読むことができるというのが『古事記』の魅力です。

「昔はこうだったんだ」とか、「今とは全く違う世界だけど、人間って同じだよな」「等身大の神様がいたんだな」とか。『古事記』を通じて、古典の面白さを知ってもらいたいです。今の10代、20代のみなさんがどのような読み方をするか、とても興味があるんですよ。