裁判員制度が2009年5月に開始されて10年になった。今年3月までの審理数は約1万2千件、裁判員や補充裁判員として市民は計約9万1千人が参加したが、このほど最高裁が公表した報告書からは課題が浮かび上がる。

 

量刑に変化、性犯罪は厳罰

量刑面では性犯罪の厳罰化が進んだ一方で、放火や殺人では執行猶予が付く割合が高まるなど、軽重両方向に幅が広がっている。また、裁判員経験者に毎年実施しているアンケートでは「良い経験だった」と回答した割合が10年間を通じて95%超となり、最高裁は「多くの国民に肯定的に受け止められてきた」と評価する。

辞退率は67%まで増加

しかし、裁判員候補者に選ばれながら仕事などを理由に辞退した人の割合(辞退率)は増加傾向が続いている。09年に53%だった辞退率は18年に67%と過去最高を記録した。

遺体の写真など衝撃的な証拠に接することもあり、相談窓口には延べ410件の相談が寄せられた。また、事前に証拠や争点を絞り込む公判前整理手続きは09年の平均2.8カ月から18年には8.2カ月に長期化。裁判官と裁判員が話し合う評議の時間も伸び、18年は09年の2倍に当たる約13時間となった。

裁判員選任前の気持ちと裁判終了後の感想(2018年)

 

【memo】一般市民と裁判官で審理
 刑事裁判に一般市民の感覚を反映させる目的で導入された。最高刑が死刑または無期懲役か、故意に被害者を死亡させた事件が対象で、裁判官3人と裁判員6人による審理が原則。公判と非公開の評議を経て有罪・無罪と量刑を決めるが、評議の経過や具体的な意見の内容、多数決の結果などは守秘義務の対象となる。違反した場合は6月以下の懲役または50万円以下の罰金。