体育祭や文化祭、球技大会など、クラスで一つのことに取り組むとき、どうすればうまくいくのだろうか。相手と良い関係を築ける言葉かけのコツを知ることが、成功の鍵になる。「伝わるコミュニケーション」についての研修・講演を多数手掛けている戸田久実さんに、うまく団結する方法を聞いた。 (安永美穂)

目指すゴールを明確に

――行事などに向けてクラスをまとめるために大切なことは?

「何を目指すのか」というゴールを皆と共有しましょう。羊飼いが羊の群れを後ろから見守りつつ「こっちに進むんだよ」と教えるように、リーダーにはいろいろな人をサポートしながら導く役割が求められます。

自分の意見ばかりを主張して目立とうとすると反感を買いやすくなります。「僕たちは」「私たちは」を主語にして「私たちはこういうふうにやっていこうよ」という話し方をするとよいでしょう。

―やる気がある人とない人の温度差があるときは?

まずは「何が大切かという優先順位は人それぞれ違う」と認識することが大切です。体育祭などの場合、「優勝を目指そう!」と考える人もいれば、「勝ち負けにはこだわらずに楽しみたい」「行事の練習より塾の方が大事」という人もいます。

自分の基準を当たり前だと考えて「朝練にも必ず参加すべき」などの価値観を押しつけたり、「優勝を目指さない人は非協力的だ」と決めつけたりしていると、「皆で何を目指しているのか」という本来の目的を見失いがちなので注意しましょう。

違う意見も受け止める

―意見が異なる人とのコミュニケーションの取り方は?

無理に相手に同意する必要はありません。考え方が違う人に対しては「〇〇さんはそう思うんだね」「そういう考え方もあるよね」と共感的理解を示してから、お互いにどこまで譲り合えるかを話し合いましょう。

相手を注意するときは、「あなたがこんな行動を取ったせいで……」と過去のことを追及し続けるのではなく、「今後はこうしようね」と未来の行動について話すと、聞き入れてもらいやすくなります。

―対立が起きたときは?

どちらの味方もしない中立的な立場で、双方の意見を引き出していくことを心掛けましょう。どちらが正しいのかを判定するのではなく、「皆が参加して良かったと思うには、どう取り組めばいいんだろう?」という本来の目的を思い出せるような言葉がけができると理想的です。

居場所づくりが大切

―リーダーを支える立場の人ができることは?

球技大会の練習で同じチームに運動が苦手な人がいる場合などは、その人のことを認める言葉がけをしていくと、クラス全体の雰囲気が良くなります。人間は「ここには自分の居場所がある」と実感できると、「頑張ろう」とやる気が湧いてくるものです。成果が出ない場合でも、「〇〇さんは毎日練習に参加しているよね」「ムードメーカー的な存在だから、いてくれるだけで雰囲気が明るくなるね」など、その人が自分もクラスの大事な一員なのだと実感できるような言葉がけをしていきましょう。

 
 

戸田久実さん

とだ・くみ アドット・コミュニケーション代表取締役。一般社団法人日本アンガーマネジメント協会理事。講師歴27年。『〈イラスト&図解〉コミュニケーション大百科』(かんき出版、税抜き1400円)など著書多数。