現金を持たずに買い物や金融取引、投資などの決済を行う「キャッシュレス社会」。政府は2020年の東京五輪・パラリンピック大会や25年大阪万博を視野に、訪日外国人の利便性向上策の一つとしてキャッシュレス化推進を打ち出し、具体的な進め方などを検討している。

政府が普及目指す

携帯電話端末などを使ったモバイル決済は北欧や英国、シンガポール、中国などが先進国だ。中国では屋台やコンビニでもキャッシュレスだが、日本は依然、現金決済率が高い。経済産業省によると、日本のキャッシュレス化比率(現金以外による決済の比率)は2割程度。韓国ではほぼ9割、中国が6割、英国・カナダが5割台と、日本は大きく出遅れている。

日本では偽札が少なく、治安が良い上に現金自動預払機(ATM)が充実しており、現金の利便性が高いという背景もある。

政府は27年までにキャッシュレス化比率を4割程度まで引き上げることを目指す。キャッシュレス化を進めることで、訪日外国人などの消費を取り込み、経済の活性化に結び付けたいとの思惑だ。また日本の消費者にとっても、支払いの選択肢を広げられ、企業や商店側でも現金管理などのコストが削減できるメリットも指摘されている。

安全なシステムが不可欠

一方、課題は多い。利用者にとっては、カード類や電子機器などの紛失による個人情報の漏洩(えい)や不正使用による損害は不安だ。

スマートフォンを使った決済サービスでは、利用者が集中してデータ処理が限界に達したことによるシステム障害も発生している。スマホ決済は利用者、店舗側とも手軽に使えるためキャッシュレス化の原動力と期待されているが、利用者が安心して使えるシステム構築が不可欠となる。