近年、めざましい進化をとげているコンピュータ。人間の手だけではできないとも、コンピュータの力を借りれば実現できる場合が少なくありません。機械工学、電気工学、コンピュータを融合させた「メカトロニクス」という技術を使って、機械をよりうまく動かす研究に取り組んでいる、千葉工業大学工学部機械工学科の熱海武憲教授にお話を伺いました。

 

コンピュータで超精密な制御を実現

熱海先生の研究の1つは、コンピュータに内蔵されているハードディスクドライブ(HDD)の「位置決め制御」だ。位置決めとは、目標の位置へ移動してピタリと止まる動作のことをいう。

HDDは、円板状のディスク上にあるデータを読み書きするため、全長8センチメートルの可動部に取り付けられた磁気ヘッドを8ナノメートルという超微小な範囲に位置決めしている。「これは、全長634メートルのスカイツリーの根元を持って、先端部分を0.06ミリメートルの範囲に位置決めしているようなもの。人間の手では不可能な超精密な制御ですが、コンピュータを使うことでそれが可能になるんです」

そして熱海先生が今取り組んでいるのが、磁気ヘッドの位置決め範囲を現在の8ナノメートルから4ナノメートルへとさらに狭め、その動きを制御する技術の開発だ。

「それが実現すると、何が変わるのですか?」と中澤さん。「まず、データをよりたくさん読み書きできるようになるので、HDDの容量が増えます。そしてそれは、地球上の電力消費量の削減にもつながるんです。理由を説明しましょう」。そう言って熱海先生が例にあげたのがGoogleだ。 同社のデータセンターには膨大な数のHDD があり、インターネット上の多くのデータが保存されている。

同社の数年前の発表によれば、なんと、人類が消費している総電力量の1.6% が、データセンターで使われているという。「HDDは高温になると故障しやすいので、冷却するために大量の電力を使うんです。人間が生み出すデータは今後ますます増えていく。これ以上HDD の数を増やさずにデータを保存し、かつ消費電力を削減するためには、HDD の容量を増やすことが不可欠なのです」

より安定したドローンの制御を研究

 

研究室ではこのほか、マルチコプタ(ドローン)の制御にも取り組んでいる。災害現場の状況確認をはじめ多様な分野で活用が期待されるドローンだが、まだ課題は多いという。要因の1つが、制御の難しさだ。

「ドローンは基本的に機体の真上方向にしか移動できません。それをコンピュータで制御し、4 つのプロペラの回転速度を個別に変化させることで、自在に動くのです。ただ、そうするためには複雑な制御アルゴリズムが必要です」。アルゴリズムとは、コンピュータのプログラムに組み込む、「何をどのような順序で行うか」という手順のようなもの。研究室では実際にドローンを飛ばして、試行錯誤しながらアルゴリズムを改良し、よりよい飛行性能や安定性を追求している。「大学で行う研究は、高校までの勉強とは違って答えが決まっていません。ぜひ、自由な発想で取り組んでほしいと思います」

【取材を終えて】中澤彩恵さん(埼玉県・浦和ルーテル学院高等学校・2年)

 

コンピュータに内蔵されているHDD は、とても細かい動作によってデータの読み取りをしていることにとても驚きました。また、試行錯誤を繰り返しながらドローンのプログラミングをしていると教わり、研究の奥深さを感じます。取材を通じて、私たちが身近なものだと思いがちなコンピュータの中で、メカトロニクスが大活躍しているということに気づくことが出来ました。

 ↓↓↓取材動画はコチラから↓↓↓