東京地検特捜部は11月19日、国に提出する有価証券報告書に自身の役員報酬を計50億円少なく記載して申告したとして、日産自動車代表取締役会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)を金融商品取引法違反の疑いで逮捕した。

「落ちた改革者」

大胆なリストラなどで経営危機に陥っていた日産のV字回復を果たして一世を風靡(ふうび)した名声は失墜。各国メディアも一斉に報道した。日産と連合を組む自動車大手ルノーがあるフランスの新聞ルモンド(電子版)は「(改革者として)ほとんど神同然」だったゴーン容疑者が「日本で落ちた」と伝えた。

逮捕状によると、ゴーン容疑者は一緒に逮捕された代表取締役のグレゴリー・ケリー容疑者(62)と共謀し、2010年度から14年度の5年間に計約99億9800万円の役員報酬を受け取ったのに、計約49億8700万円と過小に記載した有価証券報告書を関東財務局に提出した疑い。

日産立て直しに手腕

ゴーン容疑者はルノーの経営者でもあり、日産と三菱自動車の3社による企業連合のトップも務めていた。日産の社長に就任した後は、日本の取引慣行にはとらわれず、主力工場の閉鎖や部品メーカーとの関係見直しなどに大なたを振るい〝コストカッター〟の異名を取った。

グループ3社の世界販売台数は昨年、約1060万台に達し、トヨタ自動車を抜いて2位に浮上、2018年上半期(1~6月)はトップだった。17年に日産社長を退任したが、会長として依然大きな影響力を持っていた。

特捜部が解明進める

ゴーン容疑者はオランダやブラジル、フランス、レバノンの海外4カ国で住宅を無償で利用していたが、これらの住宅は日産子会社が購入していたことが判明。子会社からの報酬も有価証券報告書に記載していなかった疑いも浮上している。

特捜部は有価証券報告書の虚偽記載だけでなく、投資金の支出や経費使用の実態解明も進める。