8月のSSH生徒研究発表会で審査委員長賞を受けた

小石川中等教育学校(東京)の𡵅本(ほきもと)優也君(6年=高校3年)は、ゲル状の物体「スライム」を原料にした「偏光フィルム」を作った。偏光フィルムは、特定方向に振動する光だけを通し、液晶パネルなどに使われているものだ。

中学1年のころから、所属する化学研究会で小学生向けのスライム作り教室を開くなど、スライムに接する機会が多かった。中学3年の時に、スライム作りに使うポリビニルアルコール(PVA)という物質が偏光フィルムの材料になっていることを知った。そこで、スライムから、より性能の良い偏光フィルムを作製する方法を研究することにした。

PVAを溶かした液とPVAで作ったスライムを準備。それぞれ0.2ミリの厚さにして乾燥させてから、水に漬けてふやかした。次に、ヨウ素で染色し、ホウ酸水溶液に漬けて引きのばした。

するとスライムから作ったフィルムはPVA水溶液から作ったものより早く乾燥した。また、スライムは乾燥させても水分を保ち、ふやかす必要がないと分かった。スライムから作製した偏光フィルムは、PVAフィルムよりも容易に作れ、性能も高かった。

スライムで教材作りたい

スライムが薄くのびて、気泡ができにくいようにホウ砂の量を少なめにしたり、PVAを溶かす水の温度もだまにならないように35度にしたりするなど工夫を積み重ねた。「できた偏光フィルムをパソコンの液晶画面の前に置いて、回して色が変わった時は感動した」と振り返った。「スライムから教材を作って理科教育に役立てたい」という夢を持っている。(文・写真 木和田志乃)