パスをする桐蔭学園のSH斎藤直人主将(斉藤健仁撮影)

12月27日から東大阪市花園ラグビー場で開かれていた、「花園」こと第95回全国高校ラグビー大会は、1月11日、決勝戦が行われた。2年ぶりの決勝進出で初の単独優勝を目指した「東の横綱」桐蔭学園(神奈川)は東海大仰星(大阪第1)に惜しくも31-37で敗れて、準優勝に終わった。ただ、後半ロスタイムにも、この1年間で築き上げてきた「継続ラグビー」でトライを挙げるなど、今大会で十分に存在感を示した。(文・写真 斉藤健仁)

昨年度は予選敗退、ゼロからのチーム作り

2010年度は東福岡(福岡)と引き分けて同時優勝、そして2013年度も決勝進出を果たし、東海大仰星に敗れて準優勝だった桐蔭学園。しかし、昨年度は神奈川県予選決勝で、慶応に敗れて花園に出場すらできなかった。「少しおごりがあったかもしれません。昨年度の3年生たちには悪いことをしました」(藤原秀之監督)

桐蔭学園を率いて14年目となる藤原監督はチームをゼロから作り上げること決意する。昨年度の県予選で負けるとすぐにメンタルトレーナーを招聘(しょうへい)。運動量をベースとしたラグビーを磨くために水が入ったバッグを担いで体幹を鍛え、さらに桐蔭学園伝統の砂のグラウンドでの強化を進めた。

危なげなく決勝進出するも「僕たちはチャレンジャー」

昨年6月の関東大会では優勝、県予選でも東海大相模を寄せ付けず、全国大会出場を決め、シード校にも選出。花園でもSH斎藤直人主将(3年)を中心に、危なげなく決勝まで駒を進めた。相手は春の選抜大会、夏の7人制大会に続き「高校3冠」を狙う東海大仰星だった。「僕たちはチャレンジャーです。自分たちのラグビーをするために走って汗をかくだけです」(SH斎藤主将)

決勝では先制されるも、桐蔭学園はキックをほとんど蹴らない継続ラグビーでペースを握る。昨年度、2年生ながら高校日本代表に選出された、チーム最小の身長163㌢のSH斎藤主将のタイミングを変えて放る長短のパスにPR高北卓弥(3年)、石田楽人(3年)、LO石井洋介(3年)らが走り込み、ボールを持って前に出る。そして、相手ディフェンスが内に寄ったときに、外に展開し、好機を演出した。

前半20分には、20フェイズを重ねて最後はPR石田がトライをねじ込み、24分にはステップが得意なCTB斉藤大朗(2年)が見事なランを見せてトライを挙げて、一時は17-12と逆転に成功する。

見事なトライを決めた桐蔭学園のCTB斉藤大朗(斉藤健仁撮影)

 ロスタイムで見せた「自分たちのラグビー」

だが、前半終了間際に19-17と逆転を許してしまう。後半、相手がディフェンスで修正を図り、思い切って前に出てくる。「流れが悪かったので強みを出そうと思った」とSH斎藤主将は振り返ったが、逆にプレッシャーを受けて、後半20分までに2トライと1PGを許してしまい17-32とリードされてしまった。「相手が展開してくることはわかっていたのですが、BKに2年生が多くて、読み切れなかった」(藤原監督)

それでも桐蔭学園は後半26分とロスタイムに、1年間積み上げてきた継続ラグビーを貫いて2トライを挙げた。特にロスタイムは、自陣から28回の攻撃を繰り返し、相手のディフェンスを崩すという見事なアタックを見せた。「最後のプレーで自分たちのラグビーをやり切れたと思います」(SH斎藤主将)

だが、試合はそのまま31-37でノーサイド。桐蔭学園初の単独優勝は、またも後輩たちへと託された。藤原監督は「前半から(相手に倒されて)立っていなかった。(東海大)仰星さんの立つ意識が高かったし、1年間でやってきたことだと思います。仰星さんの方が強かった」と王者を称えた。

表彰式に臨む桐蔭学園の選手たち(斉藤健仁撮影)

チーム史上最高のSH斎藤直人主将、後輩に優勝託す

また「前半最初からミスが多くて流れがつかむことができなかった」と肩を落としたSH斎藤主将は「1年生の時は先輩たちに(決勝に)連れてきてもらっただけでした。今回は3年生だったし、主将だったのでチームを引っ張り優勝できず悔しい。後輩たちには(優勝するために)練習から試合を意識してほしい」と目の奥を赤くした。それでも藤原監督に「チーム史上最高のSH。今後の日本を背負う選手です」と高く評価されているSH斎藤は「この悔しさを忘れず大学でも頑張りたい」と前を向いた。