「デザイン」と聞くと、みなさんはどんなことを思い浮かべますか? おしゃれなものを作ることと考えがちですが、実はそれだけではないようです。産学協同でさまざまなデザインプロジェクトに取り組む千葉工業大学創造工学部デザイン科学科の倉斗綾子(くらかずりょうこ)准教授にお話を伺いました。

倉斗綾子准教授

綿密なリサーチで説得力のあるデザインを

デザイン=おしゃれでかっこいいものを作ること。多くの人はそう思っているのではないだろうか。「実は、みなさんがデザインだと思っているのは、最後の仕上げの部分なんです。そこに至るまでの企画・立案を含めた一連のプロセスが、デザインなんですよ」と倉斗先生は話す。

研究室では、学生が自由にテーマを決めて研究に取り組んでいる。空間デザイン、グラフィックデザイン、学校の教育コンテンツのデザインなど内容はさまざまだが、研究手法はいずれも共通しているそうだ。

例えば、まちづくりを考えるなら、実際にまちを歩いてリサーチすることから始める。そして、課題は何か、それを解決するにはどうすればよいかをみんなで話し合う。次に、出てきたアイデアをプレゼンテーションする。それが認められて初めて、具体的な形にしていくのだ。

「課題やニーズを客観的に調査し、得られた結果の統計分析等を通してデザインのカギとなる要素を導き出す。こうしたプロセスを踏むことで、感性だけに頼らない、『説明できるデザイン』ができる。これは、工学部に設置されたデザイン科学科ならではの強みだと思います」。

デザインは思いやり

学生がデザインしたブレンドティーのパッケージ

学生は自身の研究に加え、企業などから研究室に依頼される産学協同プロジェクトにも取り組んでいる。今年は、習志野市の老舗日本茶専門店の依頼で、若者向けのブレンドティーのパッケージをデザインしたそうだ。

商品を試飲し、感じたイメージを話し合い、それを表現するデザインを検討。若者向けなので「インスタ映え」も意識した。特にこだわったのは、商品を店舗に並べた時フレーバーの違いが一目でお客さんに伝わるか、手にとりたくなるデザインかといった点だ。

「デザインは芸術作品ではなく、それを使う人のためのものです。もちろん、最終的なクオリティは高くなければなりません。でも、作り手が『これがかっこいいよね』と押しつけるのではなく、デザインするものの向こう側にいる人を思い、その人の暮らしをよりよくするためにはどうすればいいかを考えることが大切。デザインは、思いやりなんです」。

また、林業家からの相談を受け、研究室で木の端材を加工したアクセサリーを製作し、大学祭等で販売したり、地域イベントや小学校で子ども向け木工ワークショップの活動も 行っている。福元さんもかんな屑(くず)を使ったランプシェードづくりに挑戦した。「木の香りや手触りといった魅力を、体験を通して知ることで子どもたちが環境問題や林業の後継者問題を考えるきっかけにできるのでは」と倉斗先生は語る。

 
 

さらに今年から「くらけん部活動」と称して、学生が自主的にコンピュータグラフィックスやWebデザインなどのスキルアップを図る活動も始めた。「大学4 年間は長いようで短い。この環境をフルに活用し、密度の濃い時間を過ごしてほしいと思います」。

【取材を終えて】福元まりあさん(埼玉県・浦和ルーテル学院高等学校・3年)

 
  魅力的な外見を作り上げることだけが「デザイン」ではなく、安全性や環境などさまざまなことに対する配慮、使用する人のニーズや心地よさを考えるプロセスまでも含めて「デザイン」を指すということを取材を通して知りました。先生の「デザインは人への思いやり」という言葉を聞き、デザインというものをいろいろな角度から見て考えるきっかけになりました。

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