全国から選ばれた文化部の高校生が集う第42回全国高校総合文化祭「2018信州総文祭」が8月、長野県内で行われた。演劇部門で優秀賞の仙台三桜高校(宮城)は、国立劇場(東京)で「優秀校東京公演」にも参加した。(文・写真 中田宗孝、幡原裕治)

確信の持てなかった疑問を大人にたずねるシーン

親からの虐待 想像上の宇宙旅行 相反する世界を表現

小学生の兄弟が主人公の上演作「宇宙の子供たち」(長野清泉女学院高校演劇部顧問作)は、親からの虐待を盛り込んだ、メッセージ性の強い内容だ。
 兄弟は想像力をふくらませ、食卓からめくるめく宇宙旅行へと出発する。一方、崩れゆく家族関係、兄弟の不穏な会話といった目を覆うようなシーンも迫真の演技で表現した。「今作は既成脚本です。作者の意図を読み取り、場面や台詞一つ一つに込められた意味はなんだろうと、部員みんなで丁寧に考えていきました」(坂本侑瞳さん・3年)。特に、心躍る想像世界と、生々しい現実世界のシーンをはっきり描き分けることに気を払ったという。

小学生の声色を猛特訓

部員20人が劇を作る役職を複数掛け持ち、昨年7月から今作の稽古に励んだ。主に演出を担当した坂本さんがオーディションで配役を決めた。彼女は、主人公の1人に選んだ大本晴美さん(3年)の演技面での成長をたたえる。「(大本さんの当初の演技は)小学生の男の子になりきろうとアニメチックな台詞の言い回しをしていて違和感があったんです」(坂本さん)。「そうだね(苦笑)。役柄に合った声色になるように猛特訓しました」(大本さん)。「舞台を重ねるたびに、役をつかんでいくのが分かりました、(全国高)総文祭ではもう自然体で演じていて本当にすごかったよ!」(坂本さん)
 総文祭初出場での好結果は、部員たちの自信や力になったという。「三桜演劇部にとって宝物のような作品になりました」(坂本さん)

坂本さん(右)と大本さん