石黒浩教授(大阪大学)らの研究チームは、人間と共生できる対話機能を持った自律型ロボットの実現を目指している。7月31日、日本科学未来館(東京)で最新の研究成果を発表した。人に寄り添うことができるロボットの特徴は何なのか? 人型ロボットの最前線を取材した。 (野村麻里子)

身ぶり手ぶりを交えながら会話するERICA

面接や傾聴ができる

「ERICA」は若い女性の容姿を持ったアンドロイド。傾聴や面接など、スムーズな会話をすることができる。

「うんうん」「なるほど」など自然な相づちを打ったり、会話の中で焦点になる言葉を検出して「○○について、もっと詳しく教えてください」などと話を掘り下げたりする。相手の話に対して「すてきですね」「大変ですね」といった評価も行う。一方的にずっと話すなど、発話が偏らないように調整できるのに加えて、会話中に瞬(まばた)きやうなずく動作をするので、ERICAと話した人は「話を聞いてもらっている」と感じられるのだ。

振る舞い次第で仲良しに

ERICAが話し掛けても人間が最低限しか答えなかったり、ERICAを見なかったりすると「自分に興味がない」と判断し、ERICAもあまり話さない。会話が盛り上がってERICAが相手を気に入ると、よりプライベートな話をするようになる。対話する相手の振る舞いに合わせて、アンドロイドと人間の距離感が自然とつくられていく。

人間らしさの定義は難しい 石黒浩教授

「人間らしさ」は簡単に定義できません。「人間の平均」が何かとは言えないように、人間らしさというのは人それぞれ受け取り方が違うもの。ERICAの(対話の)デモンストレーションを見て、人間らしいという人もいるし、不自然に思う人もいるようです。ですが、従来のERICAに比べると、相手の状態に合わせて話ができるようになり、傾聴や面接ではかなり滑らかに会話できるようになりました。

【高校生記者も取材】
 

「そうなんや」相づちにびっくり

 人間とロボットの境界線があいまいになってきていることを感じました。「ERICA」は単に傾聴するだけでなく、「そうなんや」と相づちを打ったり、うなずいたり、質問をしたりすることができて、本当の人間ではないかと錯覚するぐらいでした。ERICA 自身が会話を理解しているわけではないものの、人間との会話が10 分ほど自然に続く様子が印象的でした。( 高校生記者・朴玄珍)