文章の中で単語や文法を学ぼう

古文を正しく読み取るには、「なぜそのような解釈になるのか」という理解を積み重ねることが大切だ。そのためには、解釈するための原理・原則ともいえる「文法」と「単語」の学習が重要になる。また、主な作品の背景をつかむため、学校で副教材として使用する『国語便覧』に目を通しておくとよいだろう。

文法は「助動詞」が重要

文法では、助動詞が現代語と大きく異なるので、「助動詞」28語を重点的に学習しよう。「けり」ならば「過去・詠嘆」といった「意味」を覚えることはもちろん重要だが、その知識を生かすには文章を読むときに、まず「どこに助動詞があるのか」を見分けなければならない。そこで、どのような活用形の後に続くのかという「接続」と、その助動詞がどのような形に変わるのかという「活用」も必ずセットにして覚えておきたい。

単語は文脈に合った訳を

古文の単語は、一つの単語にいろいろな意味があることが多い。そのため、英単語のように単語カードの表に単語を書き、裏に訳を書くという方法で覚えることは難しい。むしろ、複数ある意味の中からどうやって文脈に合わせて正しい意味に訳し分けられるかがポイントになる。

例えば、「あやし」という形容詞は、もともとは「よく分からない」ことを意味する言葉だ。このようなもともとの意味を「語相」という。「あやし」であれば、「よく分からない」という語相から派生して、「不思議だ」「変だ」「珍しい」「(貴族から見たらよく分からないという意味から)身分が低い」といった複数の意味をもつ。文中では、それぞれの文脈に合わせて、「どの意味で解釈するか」を判断しなければならない。そのため、単語集で訳語だけを覚えるのではなく、文章を読む中でそれぞれの単語の「語相」と背後の「文脈」を考えながら、その場面に最もふさわしい解釈を考え出す練習をしていくことが重要だ。

古文の学習では、「文法だけ」「単語だけ」とそれぞれの勉強を別々に考えていると、かえって能率が悪くなる。文章を読むなかで、文法も単語も一緒に勉強し、「この文脈ではどのような意味になるのか」を考えることを心掛けてほしい。
(構成・安永美穂)

 

上野一孝先生(駿台予備学校 古文科講師)
うえの・いっこう 東京大学文学部国文科卒業。模試や教材の企画・執筆も担当している。俳人としても活動し、句集に『萬里』『李白』『迅速』など。