国際協力特別賞

「違いを受け入れる」

鵠沼高等学校2年 川下 晃嘉里

インドネシア帰りの彼は、黒くなった外見と外国語なまりの日本語でクラスメイトからからかわれていた。中学校1年生の頃は、肌は白く周りから見れば普通の生徒だった。しかし、2年生になって彼は親の都合でインドネシアへ行くことになった。そして3年生の新学期が始まる頃、彼は帰ってきた。私はからかわれている彼に外見のことで何かを言ったり、彼を避けたりしなかったけれど、心の中では変わった彼の違いを受けとめられずクラスメイトと同じ視点から彼を見ていた。

私が彼と接点を持ったのは中学校最後の委員会だった。私と彼は同じ委員会に入り何度か言葉を交わした。しだいに仲良くなるうちに私は彼を誤解していたことに気づいた。自分とは話し方も見た目も違う、だから仲良くなれない。そう思っていた。ところが彼は私に言った。
「世界には両親がいない子供も食べるものや住む場所がない子供も沢山いる。でもきっとクラスメイトのほとんどがそれを理解していない。」

その彼は別の日に、
「見た目、親、住む場所などにとらわれずその人の心を見て人を判断できる人になりたいんだ。」 と言っていた。
私は自分が恥ずかしく思えた。彼の心は素晴らしいのに見た目で彼を判断していた。

確かに世界には国籍の違い、宗教の違い、人種の違いなどの様々な違いで自由を奪われている人たちがいる。それはわかっているけれど私にとっては現実味のない話だった。ところが彼はインドネシアに行ってグローバルな学校に行ったことで様々な違いで自由を奪われている人達がいるということを実感していた。彼は私よりとても大人だった。

私は同じことをしていると思った。自分達とは違うという理由で争い、自由を奪おうとする人達と、インドネシア帰りで外見と話し方の変わった彼をからかう私を含めたクラスメイトは規模の違いはあるけれど同じかもしれないと思った。恐ろしいことをしている、すぐに終わらせなければならない、自分達が何気なくしていることは深く考えれば差別と一緒なのではないかと思った。それから私は、彼の考え方や彼の良い所を友達に広めていった。その成果が出たのだろう。彼をからかうクラスメイトは減っていき、むしろ彼と仲良くしようとするクラスメイトが増えていった。

それから私は世界の様々な違いについて積極的に調べるようになった。そして私は私なりに結論を出した。

違いから起こる様々な問題はお互いの違いを認められないから起こる。だから全ての人に価値があり、考え方があり、心があるのだと認識して、それは必ずしも自分と同じではないと認める必要があるのではないかと思う。

全ての人にはそれぞれ違った個性や能力があり、その環境の中で精一杯に生きている。

自分との違いが大きいからといって排除するのではなく、相手を認め受け入れることが大切であり、それは自分自身を認める所から始まるのだと考えた。様々な欠点を持っている自分を受け入れて、初めて他人を受けとめることができるのだと思う。

自分自身を受け入れ、違いをお互いに認め合うことができれば、クラスという小さな世界が穏やかになったように、大きな世界も平和になると私は信じたい。

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