3月の全国高校少林寺拳法選抜大会女子団体演武で優勝した清瀬(東京)。昨年のインターハイでも組演武で準優勝、団体演武で4位という実績を残した強豪だが、部員のほとんどが高校から少林寺拳法を始めている。今年は男女3種目に出場。堅い結束力と実戦に基づいた「本気の演武」を武器に、優勝を目指す。(文・写真 青木美帆)

実戦さながらの気迫で団体演武の練習を行う粕谷快里(左)と今井里歩

実戦練習が「形」に生きる

26人の部員のうち、今井里歩(3年)を除く全員が高校から少林寺拳法を始めている。中学では空手部だった石田凌也(3年)のように別の格闘技から転向した部員もいれば、文化部出身者も。団体演武の主軸をつとめる粕谷快里(3年)はダンスとスケートボードに熱中する中学時代を送っていたという。「高校でもダンス部に入るつもりだったんですが、オリエンテーションや体験入部で先輩たちがすごくかっこよかったので」と入部の動機を話した。

中高一貫の「6年計画」で選手を育てる私立の強豪校も多い。しかし、清瀬は3年間で高いレベルに到達する。過去には、3年時に世界大会で5位入賞を果たした部員もいる。その強さの秘密は「実戦練習」だ。

少林寺拳法は、大学生以上が防具を着けた実戦を行うが、高校生までは「演武」と呼ばれる演技で、形の優劣を競う。福家健司監督は「演武競技に特化し、シナリオ通りの動きを繰り返し練習する学校のほうが多いかもしれない」と前置きした上で、「あえてミット打ちや防具を着けた打突を練習時間に多く組み込んでいる」と明かす。元世界王者である自身の経験を踏まえて「本気さを追求したからこそ世界一になれた。蹴りも突きも実戦で使えるようになって初めて形に生きてくる」と部員たちに伝えている。

演武の練習中に攻撃が当たることは日常茶飯事。「よく当たる場所は、あざもできなくなる」(粕谷快里・3年)、「体のあちこちが硬くなる」(今井)と笑いながら教えてくれたが、実戦を通して得られる経験値は非常に大きい。小学生から少林寺拳法に取り組んでいる今井は「約2年半でここまで上達するのはすごい」と仲間たちをたたえ、その頑張りに刺激を受けているという。

呼吸と気持ちが一つに

インターハイは女子の組演武、団体演武と男子の組演武に出場する。特に上位進出が期待されるのが、選抜大会優勝を果たした女子の団体演武だ。6人が一糸乱れぬ動きで形を披露する団体演武の醍醐味(だいごみ)を、今井は「呼吸と気持ちが一つになった時の気持ちよさは団体ならでは」と語る。

平日の練習時間は2時間半(冬季は2時間)と短め。演武を動画撮影し、部活以外の時間を使って検証する。男子部員も自分たちの練習の合間に女子にアドバイスを送る。「男子も女子も、今年の3年生はお互いを認め合い補える力はピカイチ」と福家監督。今井は「全国制覇をしたというプライドを持って、インターハイでも絶対に優勝したい」と意気込む。

【チームデータ】
 2012年創部。部員26人(3年生12人、2年生2人、1年生2人。女子16人、男子10人)。インターハイには12人が出場。モットーは「道場外でも一拳士であれ」。練習中だけでなく日常生活でも時間の使い方、礼儀などを意識する。
3年生は6月の関東大会後に2年生に役職を譲り、自らの練習だけでなく後輩の指導にも力を入れているという