審査員特別賞

強い信念

山形県立山形東高等学校1年 長澤パティ 明寿

 

「協力隊として途上国に住み活動する。これは決して楽しい事だけでは無いが多くを学ぶことができる。」「ただ技術を教えるのではなく一緒に創っていく事が大切なんだ。」この夏、父の母国であるネパールを訪問し、現役の青年海外協力隊員として活動されている方にお話を伺う機会があった。これはその際にお聞きした言葉だ。JICAが青年海外協力隊を派遣して今年で52年。一人一人の強い思い、信念、そして地道な努力の結晶が世界をどれだけ動かしてきただろうか。

私には目標がある。将来、世界で異文化理解教育を推進し、文化・教育という観点から世界平和に寄与する事だ。昨年から始まった国際社会の取り組みSDGs(持続可能な開発目標)で言えば、目標4-7にある「文化的多様性と文化が持続可能な開発にもたらす貢献の理解などの教育」や目標16「平和と公正をすべての人に」に関わってくるだろう。なぜ私がこのような目標を抱いたのか。その1番大きな理由は、ネパール人の父と日本人の母を持った事であると思う。幼い頃から異文化にふれ、考える機会が多かった。もちろん、異文化にふれてびっくりする事や、あり得ない、信じられないと思う事も多々あった。例えばネパールの道路。なんと、大通りにも関わらず優雅に牛が寝そべっていたのだ。しかし誰も牛をどかそうとはしない。むしろ、車や人が牛をよけていたのだ。私はこの光景にとても驚いた。父に訳を尋ねると、これはヒンドゥー教の考え方によるものだと知った。ヒンドゥー教徒にとって牛は昔から自分達の生活を支え、豊かにしてくれるものであり、信仰の対象であるそうだ。違いを学ぶ事で、多様な価値観を理解できる。異文化を学ぶ事、感じる事は私にとってとても興味深い事なのだ。

今の世界、文化が争いや対立の火種に利用されてしまっているように感じる。だが文化は本来、私がそうであったように、人々の心を引きつけ感銘を与えるものではないだろうか。もちろん、異文化を完全に理解し、認め合い、受け入れる事は難しい。しかし、他者の文化について深く知らないのに勝手なイメージだけで他者の事を決めつけてしまうのではなく、まずは他者の文化について深く知り、感じるべきだ。そうする事で他者の文化の価値観、真の姿が見えてくる。そしてこれが世界の多様性を理解し、自分の文化を改めて大切にしようとする事へとつながる。グローバル化がさらに加速していくこれからの国際社会において、世界の人々が共に生きるための大きなキーポイントになると考える。私はその事を、考え方の基礎がつくられる幼い頃からの教育を通して世界に広げていきたい。

私は今、その目標への第一歩としてJICA等の様々なイベントやセミナーに参加して、世界の文化にふれると共に、自分のホームタウンである山形についても学んでいる。そのような身近な1つ1つの体験、経験がこれから、私の活動の血となり肉となっていくだろう。身近な所にチャンスはたくさんある。そのチャンスを掴み、道を切り開いていきたい。

私がこれから進みたいと考えている国際協力の分野。おそらくこれは一筋縄ではいかない。しかしどんな時でも強い信念の基、現地の人々と共に活動していきたい。時に現実と自分の理想の狭間で迷い、悩み、壁にぶつかる事もたくさんあるだろう。でもそこが踏ん張りどころ。考え、会話し、現実を受け止めながらも理想にむかって走り続けていきたい。自分が世界を変える一人になるのだ。この強い気持ちを忘れずに。

 

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