九月の恋と出会うまで
 松尾由美著(双葉文庫、680円)

◆時空をつなぐ恋愛

ある日、北村志織は自分の部屋の壁の穴から、聞こえるはずのない声が聞こえた。声の主は平野という隣に住む男。平野は志織のいる世界の1年後から話し掛けていると言う。声を掛けてきたのは、ある願いをかなえるため。平野は1年前の自分、つまり今、志織のいる世界の自分を尾行してほしいと言った。なぜ尾行を頼んだのか。彼の願いは何なのか。何度も読みたくなる恋愛SF小説。 (木場千尋さん・3年)

 

植物図鑑
 有川浩著(幻冬舎文庫、741円)

◆それは運命の恋

「お嬢さん、僕を拾ってくれませんか」。道で倒れていたイツキがさやかに話し掛ける。イツキを助けたことで始まる突然の同居生活の中で、2人はひかれ合っていく。だが、さやかはイツキの名字も何も知らない……。衝突しながらも絆を深めていくが、1年たつとイツキは家を出ていってしまう。2人の関係はどうなるのか。感動のラストにきっと涙する。 (廣渡加薫さん・3年)

 

夜は短し歩けよ乙女
 森見登美彦著(角川文庫、605円)

◆キャラが全員魅力的

京都に住むある大学生が、一目ぼれした後輩の黒髪の乙女を、個性あふれる登場人物たちに翻弄(ほんろう)されながらも四季を通じて追い続ける物語だ。キャラクター全てが魅力的で、まるでそれぞれが主人公のような存在感を放つ。そして、主人公のもどかしく共感してしまうような思いが、古風で卓越した文章から伝わってくる。今の私たちの想像を膨らませる良き一冊だ。 (桂大樹君・3年)

 

ぼくは明日、昨日のきみとデートする
 七月隆文著(宝島社文庫、724円)

◆今という瞬間を大切に

主人公の高寿はある日、同じ電車に乗っていた愛美という女性に一目ぼれをする。高寿は愛美に猛アプローチをし、共に2人の時間を過ごしていく。不思議なことに愛美はささいなことで高寿の前で何度も涙を見せる。その涙の秘密は、彼女が抱えていた絶対に逃れることのできない宿命にあった。結末を知ったあなたは、きっとこう思うだろう。「今を大切にしよう」と。映画化もされた人気作。 (髙橋蒼葉さん・3年)

 

恋愛中毒
 山本文緒著(角川文庫、679円)

◆恐ろしいけれど共感

夫との離婚、長年ファンだった作家・創路との出会い……。どこにでもいそうな主人公・水無月は、恋愛に不器用な女性として描写されているが、物語が進むにつれて恐ろしい本当の顔が見えてくる。そして衝撃のラストに「二重の恐怖」を覚えるだろう。正気の沙汰ではないのに、どこか自分のことのように共感できる部分がある。「中毒性」のある小説だ。(三森茉弥莉さん・3年)

 

※価格はすべて税込み