2 日間で1 万人以上が来場した東京・国立高校の文化祭(国高祭、9月6、7日)。最大の目玉は、観客の投票によって順位を決める、3 年生のクラス演劇だ。8 クラスのうち7 クラスが既存の作品で賞を狙う中、3100(3 年1 組)は困難を覚悟で、あえてオリジナル作品に挑んだ。(文・野口涼、写真・玉井幹郎)

一から作ることに意味
 3100が上演した「Action!」は、夢を諦めた芸人が、ある家族との出会いを通じて成長していく物語。登場人物たちが笑いを交え、時にはシリアスに、約80分にわたる熱い人間ドラマを繰り広げる。
 過去の国高祭で、オリジナル作品は観客投票による賞をとったことがない。だが、3100は話し合いの末に「全員で一から作品を作り上げることに意味がある」と考え、挑戦した。
演目とキャストが決定したのは5月。脚本チーフの杉山晃太郎君や監督の山田悠人君を中心に台本を書き上げ、その後も何度も大幅な修正を繰り返した。「前日練習したシーンが、翌日なくなっていることもしばしば」と、主役を演じた勝山涼介君は振り返る。

 それでも妥協はしなかった。「伝えたいことは何か」「どうすれば伝わるのか」を、時にはクラス全員で話し合った。
 伝えたいメッセージは「変わろう!」。「それを言葉で伝えるより、僕らが劇を全力で作り上げることで、見る人に何かを残したかった」(山田君)

オリジナル劇に挑戦した3100

ジンクスはねのけ受賞
 高校最後の夏休みは、文化祭のための練習一色に染まった。監督や演出、キャストをはじめ、内外装や音響、衣装など、クラス全員が役割を担い、それぞれの持ち場で「Action!」の世界を全力で作り込んだ。修正を重ねた台本が完成したのは、本番前日だった。
 迎えた本番。1日4回の上演には、毎回抽選で選ばれた約70人の観客が詰めかけた。「僕、みなさんと会って、ほんのちょっとだけ変わりました。みなさんに会えてよかった」。勝山君はラスト近くの劇中劇シーンでのせりふに、自分の気持ちを重ねた。クラス全員に向けた感謝の言葉だった。
 文化祭の1週間後にあった表彰式。オリジナル作品は受賞できないというジンクスをはねのけ、「Action!」は2位にあたる優秀賞を受賞した。
 「喜びの叫び声を上げる者、1位でなかったことを悔しがる者などさまざまでしたが、それも力を注いだことの現れ」と担任の花田禮司先生は目を細める。助監督としてクラスを支えた中村紗奈子さんは「国高祭がやりたくて入学した。みんなでやりきることができてよかった」と語った。
 

大勢の観客が詰めかけた

1年がかりで準備 文化祭実行委員長 稲見季香さん(2年)

 

 「全部やる! みんなでやる!」が国立高校のモットーです。国立高校にはクラス替えがないため、クラス演劇は高校生活の集大成の意味合いを持つことになります。どのクラスも一致団結して、2 年時の文化祭終了後から1 年かけて準備します。冬はプロ劇団の公演を見て勉強し、6 月ごろから発声練習などをしているようです。本番直前は受験勉強と並行して、朝、昼、夜の練習に取り組みます。こうした熱意があるから、毎年、完成度の高いクラス演劇を作り上げていけるのだと思います。

          ★舞台セット

 

可動式のバーカウンターや階段など、木材を使った本格的なセットが教室に組まれた。「代々の先輩から受け継がれた資料を見ながら作りました」(安楽佑樹君)

           ★外装

 

切り絵をふんだんに使い、家族団らんのイメージで作り上げた外装。唐澤海宏君がチーフを務めた。


 

 

★テーマソング 
テーマソング「ひまわり」は岩澤遥さん(作詞・歌)と中村壮門君(作曲)が作った。
音源ダウンロード→http://k3100final.jimdo.com/himawari-ひまわり-new/