黒板にチョークで絵を描いた作品から日本一を決める「黒板アート甲子園2018」(日学主催)で、大宮光陵高校(埼玉)美術科2年生の4人が最優秀賞を受賞した。今年は77校から143点の応募があった。(野口涼)

鮮やかな色彩で描かれた大宮光陵高校の生徒の最優秀賞作品(学校提供)

先輩の作品に憧れて… クラスメート4人で挑戦

大会は今年で3回目。作品のタイトルは「極彩色を纏い」だ。カラフルなインクが飛び散っている場所で、体を極彩色に変えたカメレオンが、美しさを独り占めしようとしている場面をイメージした。
 阿部れいなさんは、中学生の時、第1回大会(2016年)で最優秀賞を受賞した同校の先輩の作品を見て感動したという。「黒板にチョークで描くからこそのタッチや質感が魅力。いつか挑戦してみたかった」と、クラスメート3人と一緒に応募を決めた。
 「ステンドグラスみたいな透明感のある作品にしたい」「は虫類を描きたい」「ウロコの表現をしたい」など意見を出し合い、2週間かけてそれぞれの思いをひとつにした構図を決めた。制作にかかったのは5日間(延べ30時間)だ。カメレオンに立体感を出すためのウロコの表現をはじめ、目の特徴や足の質感に納得がいくまでこだわった。「それぞれ自分の好きな部分、描きたい部分があり、自然に役割分担ができました」

こちらを見つめるリアルなカメレオンのまなざし(学校提供)

チョークの使い方を覆す

特に苦労したのがカメレオンの背景となる「飛び散ったインク」の表現だ。「最初は普通に描いていましたが、色がぼやっとしていてカメレオンと差がつかない。そんな時、チョークを水で濡らすと色が濃くなることを知り、水に溶かして黒板にかけてみました」(小田切春璃さん)。試行錯誤の末、まさにインクがかかっているような鮮やかな色とウェットな質感が実現。審査でも「今までのチョークの使い方を覆すような、新しい感性を持った作品」と高く評価された。
 今回、同校は10グループが大会に応募した。「特に秀作が多い」と評価され、学校賞も受賞した。黒板アートの魅力について「黒板って面積が広いから一人じゃ絶対に無理。自然と深くコミュニケーションできる」と大髙聖依さん。大塚夏希さんは「はじめての共同制作でしたが、みんなで協力して一人ではとても描けないような作品になった」と喜びを語ってくれた。

 
作品を作った生徒たち(野口涼撮影)