今や人工知能(AI)は身近な存在になった。生活を豊かにする一方、「人間の仕事を奪う」ともいわれている。AIに関する研究に取り組む東京大学教授の古澤明さんと慶應義塾大学教授の山口高平さんらが3月、「第7回科学の甲子園全国大会」のシンポジウムに登壇。高校生の質問に答えた。 (文・写真 中田宗孝)

Q テロリストがAI を悪用したら?

A 技術の進歩には光と影の両面があります。インターネットが登場した時もサイバー攻撃が起きたように、AIを悪用する人も現れるでしょう。その際、悪のAIをディフェンスする善のAIを作って対策します。国や世界中の研究者が一つになり、AIに関する法的な基準を設けることも必要になるでしょう。(山口さん)

山口高平さん (慶應義塾大学理工学部管理工学科教授)

Q AI の研究データが膨大になったら、将来、サーバーはパンクするの?

A 今は問題ありません。ですが、大量に増え続けるデータをコンピューターに保存し続けていると、決して遠くない未来、エネルギー的には破綻すると思います。AIの研究を含めた現在のIT社会を持続可能にするようなテクノロジーを考えていくことが対策となるでしょう。(古澤さん)

古澤明さん (東京大学大学院工学系研究科教授)

Q AI を人間の体に組み込む研究はどこまで進んでる?

A 人間の脳の中にAIのチップを埋め込んで、脳の力を拡張させるスーパーヒューマンプロジェクトが始まっています。例えば、脳に埋め込んだAIとインターネットを連携させて人間の身体能力を高める研究です。ただ、この研究が大きく発展するのは、2030年……、もっと先かも知れません。(山口さん)