泣き虫部長が懸命に部をまとめる

3年生は、1月のCDレコーディングをもって引退となる。アクティブ練習で数々のユニークな動きを提案したオーボエ奏者の倉持翔汰君(3年)や、演奏会などでソロの歌を任された“歌姫”今井優花さん(トランペット奏者、3年)はじめ、個性派メンバーが揃う「アグレッシブでやんちゃな世代」と畠田先生は評価する。

部長を務めた児玉さんは、顧問の先生たちや同級生から“泣き虫部長”と呼ばれていた。1年生の頃は、100人を越える大所帯の部の雰囲気に圧倒され、「今の3年生の中で真っ先に部を辞める意思を泣きながら伝えたんです」(児玉さん)。中学の吹奏楽部ではフルートだったが、高校からサックスに挑戦したため、初めは1年生や演奏技術の未熟な部員が属するDグループにしばらく在籍し、悔しい思いも経験していた。

部長の児玉さん(左)とコンサートマスターの八百板さん

「そんな児玉だからこそ、心が折れそうになる部員の気持ちが誰よりも分かる」と、先生方は彼女を部長に指名した。児玉さんは「でも、部長になってからも時々、仲の良い学校の先生に弱音を吐いていました(苦笑)」と明かす。部長として成長する児玉さんを間近で見ていた八百板さんは、「3年生部員は涙をこらえて笑顔で頑張っていた姿をみんな知っています」と優しい笑みを浮かべる。

今年度は、高校吹奏楽の最高峰の大会「全日本吹奏楽コンクール」で5年ぶりに金賞を受賞した。大会前には、出場メンバーの楽譜の裏にサポートメンバーが寄せ書きをしたためるのが恒例だ。児玉さんの楽譜の裏には、後輩たちから「部長が一番まわりを見てくれました!」などの感謝を伝える言葉が並び、感極まった。高輪台のステージ衣装の赤いブレザーを着た児玉さんが、金賞の表彰式に登壇した。「かっこよかった。これが高輪台の部長なんだなって誇らしく思いました」(八百板さん)

「トップ」と呼ばれている各パートのリーダーたち

【部活データ】 1972年創部。部員130人(3年生37人、2年生40人、1年生53人)。2017年度の主な実績は、第65回全日本吹奏楽コンクール金賞、第30回全日本マーチングコンテスト銀賞など。オーストリア、チェコでの海外演奏など1年間に約50公演を行う。

130人が一丸となって奏でられる演奏は圧巻だ