特集 医療を学ぶ

将来、「医療」に関する仕事に就きたいと考えている人は少なくないだろう。 今回は医療に関することを学べる学部や学科、研究室などを紹介する。

1人1つのテーマを決めてメンタルヘルスを研究 将来の看護の仕事に活かす(埼玉医科大学保健医療学部)<PR>


保健医療学部 看護学科 精神看護学研究室 大賀淳子教授

メンタルヘルスが専門の大賀淳子教授。学生時代の病院実習で、境界性障害や鬱病の傾向のある同年代の患者と出会ったことが、この分野に関心を持つきっかけとなった。「心を病む若者が想像以上に多いことを知り、心の健康のために環境を整えること、強い心を育てることの大切さを意識するようになったのです」

友だちや家族との関係、受験など、誰もがもんもんとした思いを抱える中学・高校時代。大賀先生の研究室では、その頃の気持ちを振り返り、レポートや研究のテーマにする学生もいる。「心の病には誰でもなります。というより、健康と不健康は延長線上にあり、ここまでが健康でここからが病気と区切れるものではありません。メンタルヘルスを学ぶことで、学生たちはそういう視点を自然と身につけるようです」

自分の心や体に敏感になることが大切

心と体は相関関係にある。心の健康=メンタルヘルスに必要なのは、まずは健康的な生活を送ることだ。「心だけ取り出して健康にするのは難しい。当たり前のことのようですが、よく食べ、よく寝て、よく運動することがメンタルヘルスによい影響を及ぼします」と大賀先生は言う。 自分の心や体に敏感になることも大切だ。「つらい時、人は自分でそのことに気が付かないまま頑張り続けてしまいがちです。心の病を予防するには、自分をごまかさず、つらいことをつらいと認識することもとても重要なのです」 では、自分がつらいことに気が付いた時、私たちはどうしたらいいのだろう。答えのひとつはSOSを発することだ。「困ったときの相談相手に関する全国調査の結果を見ると『誰にも相談しない』という人も多いようです。しかし人は孤立してしまうと良い解決策を見いだすことができません」と大賀教授。「相手は友だちでも親でもかまいません。重要なのはつらい気持ちを外に出すこと。話すことによって考えがまとまり、答えを自分で見いだすことができるようになるのです」

医療従事者としてメンタルヘルスの知識を生かす

社会的にメンタルヘルスへの関心が高まるなか、医療従事者に対するメンタルヘルスの重要性にも注目が集まっている。「メンタルヘルスを学んだ学生が将来看護師になったとき、自分や周囲の人が健康な心を持って働き続けるために、大学で学んだ精神看護学が生きてくるはずです」と大賀教授。看護師を目指す高校生には「やりたいことを一生懸命やること、極めること、夢中になってやることが、自分の心を磨き、よい看護師になることにつながります。ほめられるためにではなく、自分で自分をほめるために頑張ってください」とメッセージをくれた。

先輩に聞く

看護学科では、4年次に必修の「看護研究セミナー」で、一人1研究に取り組む。大賀先生の研究室に所属する5人の学生に話を聞いた。

左から荒川さん、奥家さん、佐藤さん、吉野さん、山田さん

吉野杏菜さん(埼玉・県立松山女子高等学校出身)

リラックス効果がある「足浴」とα波による音楽療法、そしてその両方を合わせて行い、それぞれ血圧や呼吸数などを測定。副交感神経に与える影響(リラックス度)を調べました。二つを合わせることでリラックス度は促進されると考えていましたが、測定項目や人によっては逆に交感神経が優位になることが分かりました。結果は対象者の音楽の好みによっても変わるかもしれないと考えています。

山田瑞歩さん(埼玉・県立所沢高等学校出身)

統合失調症患者などに対する「身体拘束」は人権侵害ですが、医療の現場では普通に行われているのが実情です。そのことに問題意識を持ち、知識・経験に差がある1・3・4年生を対象にアンケートを実施。「仕方ない」「必要」と考えている人は4年生がもっとも多いことが分かりました。私自身は身体拘束をしなくてもどうにかならないか考えられる看護師になりたいと思います。

佐藤由唯さん(埼玉・県立伊奈学園総合高等学校出身)

喫煙している母の健康が気になったことから、禁煙の有効な勧め方を研究テーマにしました。喫煙経験のある人10人を「喫煙中の人」「禁煙に成功した人」「禁煙に失敗した人」の3群に分けてインタビューを実施。結果、ヘビースモーカーは禁煙する気がない人が多いこと、今は禁煙する気がなくても、たばこが一気に1000円に上がったら禁煙しようと考える人が多いことが分かりました。

奥家真由さん(茨城・県立日立北高等学校出身)

就寝前に「その日あった良いこと」を3つ書き出すTGT(three good thing)というポジティブ心理学の一手法を、学生・高齢者約20人を対象に試してみました。結果、学生はほぼ効果なし。時期が模擬試験と重なったせいか逆にネガティブ感情のほうがアップした人もいました。同じ出来事があっても捉え方は人それぞれ。ストレスをうまく回避する方法を自分なりに見つける必要を感じました。

荒川泰我さん(栃木・私立作新学院高等学校出身)

3年次後期から4年次前期にかけて行われる「領域別看護学実習」が与える死生観(尊厳死・安楽死・自殺などに関する意識)への影響を「死生観尺度」を使って調査しました。また、実習で終末期に近い患者さんを受け持った学生にインタビューも行いました。死生観は各個人の中で長い時間をかけて育まれたものであり、実習だけに影響されるものではないことが分かりました。

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