(左から)千葉工業大学理事長の瀬戸熊修氏、パナソニックアライアンス社常務の渕上英巳氏、センター長に就任した千葉工業大学の古田貴之氏

パナソニックと千葉工業大学は12月13日(水)、「パナソニック・千葉工業大学産学連携センター」を設立。大学が持つ高いロボット開発技術とパナソニックの家電製品に関する企画・開発力を融合させ、製品化に向けた技術開発を共同で取り組んでいくという。

原発事故でも活躍したロボットを開発

パナソニック・千葉工業大学産学連携センターが入るのは千葉県習志野市の千葉工業大学津田沼キャンパス内。同大学の未来ロボット技術研究センター(fuRO)は、2011年3月11日に発生した東日本大震災により被害を受けた福島第一原発の探査で活用されたレスキューロボット「Quince」など最先端技術を備えたロボットを数多く生み出してきた。今回の連携は、そうした先端技術を「円滑かつスピーディーに実用化」することが目的だ。

同日行われた記者会見では、センター長を務める古田貴之氏(千葉工業大学未来ロボット技術研究センター所長)と副センター長の渕上英巳氏(パナソニックアプライアンス社常務)、同大の瀬戸熊修理事長が出席。自動操縦やロボットにおける“人間の目”の役割にあたるというfuRoが開発した高速空間認識技術「ScanSLAM」を搭載したロボットを使い、デモンストレーションが行われた。

世界トップレベルの技術をロボット掃除機に搭載?

SLAMとはSimultaneous Localization and Mappingの略で、レーザーやカメラ等のセンサーの情報を解析し、ロボットが自分の位置を推定しながら周囲の地図を構築していく技術のこと。fuRoの「ScanSLAM」は高速処理が可能で、世界でもトップレベルの性能を有しているという。デモンストレーションでは、ロボットが場内を移動すると、別に設置されたモニターに室内の地図が作成されていく。しかもその地図ができていくのは、移動とほぼ同時だ。

先端技術を搭載したロボットでデモを行った

同センターでは、このScanSLAMを筆頭に、fuRoで培ってきた人工知能やモーターなど先端技術を惜しみなく用い、「ロボット家電」の開発を進める。

「これまで日本の大学の研究ではインパクトのあるイノベーティブな製品や事業が産まれる例は少なかった。それは実際に家庭で使われるといった出口イメージを基にした中期的、長期的な研究がなかなかできなかったから。今回は製品開発を前提にしている点、大学・企業が一つの場所でひざ詰めで共に創るという点で、従来ない形になると思います」(古田氏)と話すように、「新たな産学連携のスタイル」による共同開発となる。会見が行われたセンターの室内は、フローリングの床など「家の中」を再現したスペースがあり、その本気度が感じられた。同センターが生み出す「千葉工業大学×パナソニック家電」が、店頭に並ぶ日はそう遠くないのかもしれない。

ロボット上部には360度・3Dの高精度センサーが付いている