最優秀賞・優秀賞の6チーム。2018年5月に米国ニューヨークで開かれる国際大会に派遣される

高校生が世界各国の大使役になり国連決議の採択を目指す第11回全日本高校模擬国連大会(グローバル・クラスルーム日本委員会、ユネスコ・アジア文化センター、国連大学主催)が11月11、12の両日、東京の国連大学で開かれた。「ジェンダー平等」をテーマに86チーム172人が討議を重ね、最優秀賞には、東京・海城高校と神奈川・桐蔭学園中等教育学校の両チームが選ばれた。(文・写真 田崎陸)

高校生が大使となり政策検討

全国大会に出場できるのは、事前の書類審査を通過したチームのみだ。今大会は、同じ学校の2人でチームを組み、国連加盟国のいずれかの大使を任され、その国の外交方針にのっとって会議・交渉に参加する。会議は国連と同様のルールで行われる。公式のスピーチや議事進行は英語で行われるが、大使同士の非公式の交渉は日本語を使える。今大会では、約1カ月前に担当国が決定した。各チームは、議題に対する担当国の外交姿勢を調べ、本番でどのような政策を打ち出すか検討してきた。

メキシコ担当の海城高「西欧と途上国の溝埋める」

議題のジェンダー平等は、文化や宗教が絡み、先進国と発展途上国、西欧諸国とイスラム国家で対立しがちなテーマだ。当日は2つの会場に分かれて会議が行われた。A議場で最優秀賞を獲得したのは、メキシコ大使を担当した山田健人君(東京・海城高校1年)と島村龍伍君(同校2年)だ。2人はメキシコを希望した理由を「対立しがちな西欧諸国と発展途上国の中間地点にいる。双方の溝を埋める役割を果たせると思った」と話す。その言葉通り、決議の共同提出国には、イギリスやフランス、カナダの西欧諸国と、イランやスーダン、シリアなどのイスラム圏の国々が、一緒に名を連ねた。山田君は「各国の文化の尊重とジェンダー平等は、本質的には同じ。1人1人を尊重することにあると思う」と強調。提出した決議の賛同国を増やした。

UAE担当の桐蔭学園中等、合意形成に努力

B議場では、アラブ首長国連邦(UAE)を担当した永見大智君(桐蔭学園中等教育学校2年)と渡邊玲央君(同校2年)が最優秀賞に輝いた。UAEはイスラム圏の国で、女性の社会進出には消極的な国の1つだ。2人は大会前に、どの国も賛成できるような決議案を準備していたが、本番では書式のミスによって決議案が受理されなかった。渡邊君は「頭が真っ白になった」と振り返る。永見君は「ほかの賛同国に申し訳ない思いだった」。それでも、議論に積極的に参加し、できるだけ多くの合意を取り付けようと活動していたことが評価された。最優秀賞で名前を呼ばれ、「うれしいというよりは、安堵の気持ちの方が大きかった」と渡邊君。永見君は「受賞のうれしさを糧に、日本チーム全体で力を結集したい」と国際大会を見据えていた。

今回の大会で、最優秀賞と優秀賞を受賞した6校12人は、来年5月にニューヨークで開催される高校模擬国連国際大会へ派遣される。派遣チームは次の通り。

【最優秀賞】
東京・海城高校、神奈川・桐蔭学園中等教育学校
【優秀賞】
東京・渋谷教育学園渋谷高校、鳥取・鳥取西高校、東京・頌栄女子学院、神奈川・浅野高校
大使たちが席を離れ、決議の賛同国を増やすための交渉を重ねた