理系のマナビ

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映画1本を一瞬でスマホに送信!? 超高速無線通信を研究する千葉工業大学の枚田教授<PR>


枚田明彦教授(千葉工業大学 工学部 情報通信システム工学科)

電波を使って安全・安心な社会を目指す

近年、「IoT(Internet of Things)」という言葉がニュースで頻繁に取り上げられ、さまざまなモノがインターネットに接続する時代に入りつつある。それにより生活のあり方も大きく変わろうとしている。

たとえば、手元にある食材で何を作ったらいいか話しかけると献立を提案する電子レンジ、さらには温度などを計測して自動で水やりをする植木鉢もあったりする。植木鉢はそもそもデジタル機器ではないが、こうしたモノもネットにつながっていくのがIoTの特徴だ。財布をどこかに置き忘れても、すぐにスマホで位置を確認できる。そんな便利で安心な時代が近い将来訪れるかもしれない。

こうしたIoT社会実現の支えになるのが、枚田明彦教授が研究しているテーマのひとつ、無線センサネットワークを使ったデータの収集・解析技術だ。あらゆるモノにセンサを取り付け、無線通信で離れた場所から監視や制御をする。すでに農業や流通などの分野で実用化されているが、枚田教授の研究は橋や道路といった屋外構造物の保守・維持管理に活用することを目指している。屋外構造物は、作業員が5年に一度などのペースで現場に出向いて点検しているため、常に状態を確認できるわけではない。センサを取り付けて遠隔で管理できるようになれば構造物の不具合などをリアルタイムで把握でき、異常を発見しやすいため安全性が向上。さらに人件費も抑えられるのだ。一方で、課題もある。電柱や橋などを全て監視するには、センサを数百個から数千個ほど取り付ける必要がある。また、屋外構造物に設置したセンサでは、各センサからのデータ収集法や、センサの省電力化が大きな問題となる。枚田教授は、この課題の解決に向けて、各センサからのデータを重要度によってランク付けして、ネットワークがスムーズにつながるようにするといった研究を進めている。「電波を使って安全・安心な社会を実現することを目指しています」と話す。

コンクリートなどの構造物を破壊せず、内部のひび割れ等を調査する機器。

 

映画1本分のデータを一瞬で送受信

研究テーマのもうひとつの柱が、100ギガヘルツを超えるミリ波・テラヘルツ波を使った超高速無線通信技術だ。現在、携帯電話などで使われる電波の周波数は800メガヘルツから1ギガヘルツほどだが、それより100倍以上高い周波数の領域となる(下図参照)。この領域はさまざまな活用が期待されており、その一つが超高速の無線通信の実現である。とはいえ、最先端ともいえる領域のため、国内外で研究を行う大学も数えるほどで、実用化もまだこれからといった段階だ。

たとえば現在、枚田教授は近接無線技術の研究を主に行っている。「近接無線技術は、身近なところではSuicaやPASMOなどで使われています。現状では無線機を近づけて通信する場合、電波が何度も行ったり来たりしてデータ通信に悪影響が出るため、それを抑える必要があるのです」。

この研究が進むと、生活にどのような影響があるのだろうか。「たとえば、2時間の映画を電車で移動中にスマホで観ようとしても、映像があまりきれいでなかったり途中で固まったりすることでストレスを感じる人も多いと思います。今後は、映画のデータを一瞬でスマホに送って、4Kや8Kといった高解像度の映像をスムーズに観ることができるようになるでしょう。大量のデータを送受信できると、このような未来が待っているのです」

NTTで長年無線システムなどの開発に従事し、昨年、千葉工業大学教授に就任した枚田教授。今年9月には、研究室に初めて学生を迎えた。民間企業での経験を活かし、研究の企画立案や成果発表の重要性を伝えながら丁寧に指導していく方針だ。

最後に高校生には、「勉強は言われてやるのではなく、自分でやりたいというモチベーションを見つけるのがいい。そのためには、自分の世界を広げることをおすすめします。いろんなことを調べたり人に聞いたりして自ら動いていけば、希望する進路も見つかると思いますよ」と、自らの経験に基づいてアドバイスしてくれた。

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