ヘアメーク・藤尾明日香(Otie) スタイリスト・道券芳恵

多くの作品で主演を飾る人気女優・新垣結衣さん。合唱曲「手紙〜拝啓十五の君へ〜」をモチーフにしたベストセラー小説を映画化した「くちびるに歌を」では、ピアノ演奏に初挑戦。自身の高校時代は、友達や先生と過ごした時間が忘れられないという。
(文・中田宗孝、写真・玉井幹郎)

撮影で手が震えた

のどかな島にある中学校の合唱部員と臨時教員との交流を描いた青春映画「くちびるに歌を」で主演を務める新垣結衣さん。ピアニストの教師という役どころのため、撮影前からピアノ演奏を猛特訓した。
 
 「毎日、ピアノの前に短時間でも座るよう心掛けることから始め、後はひたすら練習。撮影本番では、プレッシャーで鍵盤が全く見えなくなるほどでした。手が震えるし、動かないんです。プロの巧みな演奏に1フレーズでも近づけることを意識して弾き切りました」
 
 教師役だったが、撮影現場では合唱部員役の10代の俳優たちに教わることも多かったという。
 「部員役の皆さんは、カメラが回っていない時も、合唱曲を楽しそうに歌っていたんです。歌えば歌うほど上達していくので、『私も頑張らないと』いう気持ちにさせられました。彼らの演技に向き合う真っすぐな姿勢に、気付かされ、学ばせてもらいました」

忘れられない卒業旅行

学業と女優活動を両立させる多忙な高校時代を過ごした。唯一の安らぎは、学校の友達とのランチの時間だった。
 
 「高1のころ、一緒にお昼ごはんを食べるグループが自然にできたんです。進級してクラスが別々になっても、3年間続きました。今振り返れば、何げない日常だけど、貴い時間に思えます。お昼のメンバーで、鎌倉へ卒業旅行に行ったのも大切な思い出です」
 
 3年生の時は、担任の先生に支えられた。
 「出席できなかった授業を補うため、放課後、1人で居残りをして課題に取り組むことがよくありました。そんな時に、決まって担任が笑顔で『どう?』って声を掛けてくれました。特別な言葉ではないのですが、気持ちが追い詰められていた私は、先生の屈託のない笑顔にいつも救われていましたね」
 
 最後に、高校生にエールを送ってくれた。
 「高校生活でいろいろなことを経験する中で、不安になることもあると思います。不安に直面したり、ツライことがあったりしても、どうにかなるから大丈夫。その時々で、友達や先生がきっと手を差し伸べてくれる。何とかなるんです!」

あらがき・ゆい
1988年6月11日、沖縄県生まれ。雑誌モデルとして活動後、2005年に女優デビュー。主な出演作は、ドラマ「マイ☆ボス マイ☆ヒーロー」「リーガルハイ」シリーズ、映画「恋空」など。8月29日公開の映画「劇場版 S -最後の警官-」に出演が決定。