最先端の科学技術を体感できる日本科学未来館(東京都江東区)が今春、常設展を大幅にリニューアルした。「宇宙船地球号」はどこに向かうのか、私たちは未来に向けて何ができるのか、体感しながら学べる展示は高校生にお薦めだ。
(文・写真 木部一成)

災害や危険 どう向き合う?

目玉の新コーナーの一つが大型展示「100億人でサバイバル」。21世紀の人類を脅かすのは、地震や噴火などにとどまらない。異常気象、感染症、化学物質による汚染……。こうしたハザード(危険の種)の数々を、直径6.7㍍の入り組んだ模型で「見える化」している。

火山や台風、工場が起因するハザードは赤い玉で表される。ごろごろと街へ転がり、人間をドミノのようになぎ倒す。命が失われる場面が来館者の目に繰り返し映り、やがて「どうすればいいのか」という思いに突き動かされる。

「展示を通して『想定や想像を超えた災害や事故が起こりうる』という事実を一人一人が自分事として捉えてほしい」。リニューアル公開(4月20日)の直前に熊本地震が発生したこともあって、総合監修を務めた毛利衛館長の言葉には、切実な願いがこもった。

「100億人でサバイバル」の大きな模型。赤い玉(ハザード)が人間をなぎ倒す様子を表現した

理想の地球を残すには?

もう一つの大型展示が「未来逆算思考」だ。50年後にあるべき理想の地球を設定し、子孫にどうすれば理想を贈り届けられるのか。現在というスタート地点にさかのぼり、ゲーム形式で思案する構成にした。

「いつまでもきれいな水が飲める地球」「芸術文化に満ちあふれた地球」など、子孫に贈りたい地球を8つの中から選び、スタンプを押す。

その後、全長10メートル以上もある、電子表示のゲーム板に移動。選んだ地球が50年後に到達できそうなコースを、タッチパネルで指示して行方を見守る。だが、途中に「欲望」や「無知」といった障害が待ち受け、なかなか無事にゴールまで行き着かない。

理想を志しても、なかなか実現に至らないのが現実の世界。そのもどかしさもリアルに伝わってくる。失敗すると、ゲーム板脇のディスプレーに「残念です。でも、ご先祖様が未来逆算思考を続けてくれたら、違う未来になるかも。お願いします!」といった子孫からの手紙が表れる念の入りようだ。

「未来逆算思考」のゲーム板。理想の地球を無事50年後に贈り届けられるか

 

ASIMOも健在

リニューアル前からの人気者、ロボットのASIMOは実演場所がジオ・コスモス前に変わり、より注目を集めている。ASIMOは登場すると、こんな風に語りかける。「大事なのは新しいテクノロジーとどう付き合うか。皆さんが考えることです」。地球の未来を他人任せにはしないで、というメッセージはどの世代、どの国の人にも伝わるはずだ。

パフォーマンスを披露するロボットのASIMO。相変わらずの人気だ

日本科学未来館 新交通ゆりかもめ「船の科学館駅」徒歩5分、りんかい線「東京テレポート駅」徒歩15分など。開館時間は午前10時〜午後5時。休館日は毎週火曜(祝日は開館)と年末年始。入館料620円(18歳以下210円)。別料金が必要な企画展「GAME ON ゲームってなんでおもしろい?」を5月30日まで開催。