遅延ゼロ。 混雑ゼロ。「未来の鉄道」をAIで実現しよう。<PR>


 

日本の鉄道の運行は世界一正確だといわれるが、本当だろうか。最近、特に首都圏ではラッシュ時に電車の遅延が頻発しているからだ。しかも、自然災害や人身事故といった特別な理由もなく遅れるため、利用者の不満は高まる一方だという。そんな現状を改善し、「列車遅延ゼロ」を目指す研究が進んでいる。カギとなるのはAI(人工知能)。今朝、電車が遅れて学校に遅刻しそうになった人は必読だ。

遅延状況を「見える化」し列車の運行を改善

わずか数分程度の列車の遅れでも、通勤・通学のラッシュ時に発生すると影響は大きい。特に首都圏では1つの列車が複数の鉄道会社をまたいで運行する「相互直通運転」が増えているため、例えば埼玉で発生した遅延が東京や神奈川にまで伝播することもしばしばだ。

こうした遅延をどう解消すればいいのか。頭を抱える鉄道会社に、ある画期的なシステムを提供したのが富井規雄教授の研究室だ。そのシステムが、下の「色付きダイヤ図」。「簡単に言うと、列車の運行実績、つまりそれぞれの列車が実際に各駅に到着し、発車した時刻を『見える化』したんです。非常にシンプルなものですが、鉄道会社にえらく喜ばれました」

縦軸は駅(距離)、横軸は時間。斜線1本が列車1本を表し、遅れの大きさ別に色分けしてある。青は遅れなし、赤は5分以上遅れた列車だ。また、駅での停車時間が長いと後続列車が入線できず、遅延の大きな原因になる。そこで、各駅で列車の停車時間がどれほど増えたかを○の大きさで表した。つまり、「赤くて○が大きい部分ほど遅れが大きい」ということ。この図なら、どの時間帯に、どの駅で、どれほど遅れが増大したか、減少したかが一目瞭然だ。

例えば、図2では一番下の始発駅から赤い斜線が極端に多い。それ以前の、図1にはなかったことだ。この間に何があったのか。鉄道会社がさまざまな要因を検討すると、ホームドアの新設が原因だと判明した。駅員が乗客の安全確認に手間取ったり、運転士がホームドアと列車ドアの位置を合わせるのに慎重になったりして生じた秒単位の遅れが積み重なり、一番上の終着駅まで伝播していたのだ。鉄道会社は早速改善策を実施。図3では始発駅での赤い斜線が消え、遅延が解消したことがわかる。

 

AIや機械学習で膨大なデータを解析

列車の運行実績のような大量のデータを解析する上で富井教授が活用しているのが、AIや機械学習といった最先端の技術だ。「例えば、100日のうち95日はA駅で電車が遅れている。その先のE駅でも遅れている。では、両駅の遅れは関係があるのか、偶然なのか。それを判断するために、膨大な量のデータの中から規則性や関連性などを見出していくんです」。これは「データマイニング」という技術で、AIの一種。答えを推測するだけなら人間でもできるが、それを裏付ける客観的な根拠を見つけるのは、コンピュータでなければまず不可能だという。

今目指しているのは、コンピュータが列車の遅延状況を見て、どこに問題があるのかをぴたりと探し当てるプログラムを作ること。現時点では何が問題なのかを見つける作業は100%人間が行っている。それを60%程度にまで減らすのが目標だ。

自分のアイデアをプログラムで表現しよう

列車の運行計画に関するこうした研究を行っているのは、国内では富井教授の研究室以外ほとんどないという。ほかにも鉄道をテーマにしたユニークな研究が着々と進行中だ。

1から開発したのが、駅のホームで乗客がどう動くのかをシミュレーションできるプログラム。これを使って、電車の乗降にかかる時間の予測をはじめ、どの位置にホームドアや階段を設置すればホームの混雑を緩和できるか、乗客が電車を待つ際にどう並べば最速かつスムーズに乗車できるかなどを検討している。こうした研究がさらに進めば、いずれ列車の遅延も、ホームや車内の混雑も一切ない日がやってくるかもしれない。

自分が開発したプログラムによって社会がより快適になっていく。それを実際に目にすることができるのがこの研究の魅力だと、富井教授は語る。「だから、『こんなことができたらいいな』というアイデアがあれば、どんなに難しそうに思えてもチャレンジし、具体化してほしいですね。芸術家が音楽や絵画で自分を表現するように、情報工学に携わる人間にとってはプログラムを作ることが自己を表現する手段です。自分のアイデアを自由自在にプログラミングできる能力を、ぜひこの学科で身に付けてもらいたいと思います」

お話を聞いた先生

千葉工業大学 情報科学部 情報工学科 

富井規雄教授

まだある! 情報科学部情報工学科の研究

地図アプリの精度向上を目指して

 

千葉工業大学大学院  情報科学研究科情報科学専攻修士課程2年
矢代千晶さん(2016年3月情報科学部情報ネットワーク学科卒業)
千葉・八千代松陰高等学校出身

スマートフォンで地図アプリを使っている時に、現在地が間違って表示されたことはありませんか? 地図アプリはGPS衛星から送られる電波をキャッチして位置を測定するので、高層ビルの間のような電波の届きにくい場所だと誤差が生じやすいんです。そうした誤差を補正するシステムを考案するのが私の研究です。目標は、スマートフォンの動きの変化率を取得する「加速度センサー」の精度を高めて、より正確な道案内ができるようにするとともに、「何メートル先に段差があります」といった詳細な道路情報まで教えられるようにすること。そうすれば、例えば障害者の方が街中を移動する時などに役立ててもらえますよね。こんなふうに、情報通信技術によって私たちの社会や暮らしはより便利に、快適になるんです。

それを肌で感じたのが東日本大震災の時でした。被災地に住む親戚と連絡をとろうにも、電話もメールも通じない。そんな中で唯一SNSを通して無事を確認できたことに感動し、この分野を志しました。プログラミングは未経験でしたが、情報ネットワーク学科では各学生のレベルに合わせて基礎から指導してもらえたので、システム開発に必要な知識と技術をしっかり身に付けることができました。千葉工業大学の魅力は、学生の学ぶ意欲に親身に応えてくれること。iPad miniやソフトを全学生が無料で利用できるなど、充実した学習環境の中で自分の学びを思い切り追究できます。

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