鹿喰善明教授

[明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 鹿喰研究室]

動画の配信に欠かせない
画像の圧縮技術

世界のトップアスリートが集ったリオデジャネイロの熱気。その一瞬一瞬の躍動を映し出したテレビ放送の裏方を担ったのが、鹿喰善明教授が研究する映像の圧縮・伝送の技術だ。

鹿喰教授は、NHK放送技術研究所で30年間、画像処理技術の研究開発に携わってきた。従来の標準テレビからハイビジョンテレビ、そして4K、8Kと呼ばれるスーパーハイビジョンへと進化を遂げつつある現在。鹿喰教授は、そんなハイビジョン技術の誕生から関わり、現在の映像技術の根幹を築き上げてきた実務経験者で、2014年4月より明治大学で教鞭をとる。

鹿喰教授が特に専門とする映像データの圧縮とは、実は高校生にもなじみ深い“You Tube”などの動画配信にも大きく関わる。そのまま送るには重すぎる画像データを軽くする技術である。一般の人が気軽に動画をネット上にアップできるのも、圧縮技術があってこそだ。

これまでの標準テレビの5倍以上の重さと言われるハイビジョンは、圧縮しなければ放送することができない。しかし、圧縮すると元の画像に戻したとき粗くなる。すなわち圧縮すると実はまったく元通りには戻らないのだ。

「1つしかないものを、2つあるように見せる手品と同じようなもの。圧縮した画像を元に戻した時、再現されない色や細部など元の画像との違いを、人の目ではわからないようにすることが求められているのです」と鹿喰教授。

高画質の価値は
リアルな臨場感にあり

鹿喰教授は、映像そのものの「評価」にも取り組む。「(8月1日から)スーパーハイビジョンの試験放送がNHKで行われています。ただ、画像の質が上がっても、見る側にとってどのようなメリットがあるかについての評価はまだ不十分なのです」。

そもそも、評価の対象となるスーパーハイビジョンの価値とは何なのだろうか?「そこに映し出されるリアルな臨場感ですね」と鹿喰教授。「たとえばライブやスポーツ観戦。スポーツ選手の躍動感などがよりリアルに伝わり、その場にいるような感覚にしてくれます。また、本物そのままの色や風合いを映し出すことができるので、食べ物ならおいしさが伝わり、テレビショッピングでは購買意欲が増すことでしょう。もっとも、傷んだ果物など、おいしくなさそうな感じもリアルになりますが(笑)」。

より多くの色をもち、色の再現力が高いスーパーハイビジョンは、正確な本物感を映し出す。しかし、それをよいとするかどうかは、人の主観にも左右される。そこで、映像の評価が必要となるのだ。「圧縮をはじめとする映像処理技術は、コンピュータを使ってシミュレーションしますが、映像の評価は人に映像を見せ、アンケートをとります」。意外にもアナログな作業も要する。

スーパーハイビジョンの活躍はテレビだけではない。最近では、手術などで使用される医療用カメラにも高画質が求められ、需要が広がる。

最後に「高校生には、学ぶことに対する畏れと希望をもってほしい」と鹿喰教授。「今はネットに情報が氾濫し、何でもわかった気になることが多いと思いますが、その情報が正しいとは限らないし、今は正しくても10年後には正しくなくなっているかもしれません。“未知”は、現在にも未来にもあるという意味で“畏れ”をもってほしい。でも、知らないことで物怖じしてはダメ。知ることをポジティブに考えてほしい。研究は、畏れと希望のどちらが欠けても成立しません」。

スーパーハイビジョン(4K、8K)…8Kは、最新の液晶テレビである4Kの4倍の解像度。現在、最も普及しているハイビジョンの16倍の解像度になる。

 先輩に聞く
総合数理学部先端メディアサイエンス学科4年
小田桐航平さん(群馬県立中央中等教育学校出身)
 高校時代は文系クラス。入学後は0から理数系を学ぶ必要がありました。しかもハードな体育会準硬式野球部に所属。文系向けの数学の授業や友人のサポートによって、勉強と部活動とを両立させることができました。
 鹿喰研究室での1年目は、野球経験を生かし、ピッチングフォームを判定評価するプログラムを制作。今は卒論に向けて、ディスプレイに映し出される色合いが、実際の色をどの程度表現できるのかを研究中です。プログラミングは何万通りもの方法があり、答えが1つじゃない。研究を通して自分で答えを探す、開拓精神が身につきました。高校時代は、人や本にたくさんふれて興味あることを見つけ、大学でぜひそれを深掘りしてください。大学に入学してから探すのでは、時間がもったいないですよ。

 

 

 

 

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