新時代の通信テクノロジー「可視光通信」とは

地図アプリを頼りに目的地を探し、わからないことは検索エンジンで“ググる”─そんな日常を送っている私たちにとって、なくてはならないのがインターネット。高度情報社会においてネットワーク技術は極めて重要なテクノロジーといえるだろう。

パソコンなどが通信回線でデータのやり取りをするネットワークをLAN(Local Area Network)と呼ぶのはみなさんも知っての通り。現在はケーブルの代わりに電波を使う「無線LAN」が主流だ。

これに対してLED(Light Emitting Diode)電球を使用した最新の通信技術を「可視光通信」という。

LEDとは電気を流すと発光する半導体の一種で、信号機や車のテールランプをはじめ、消費電力が少なく寿命が長いという省エネ性能の高さから、最近では照明としての利用が急速に進んでいる。「これまでの照明と異なり、LEDは人の目には感じられないほどの高速で点滅させることができる。この点滅のパターンに情報を持たせてデータのやりとりをするのが可視光通信です」と千葉工業大学 情報科学部 情報工学科の鎌倉浩嗣教授は説明する。

 

既存の照明が通信インフラに

では可視光通信には、従来の無線通信と比べてどんなメリットがあるのだろう。「ひとつはインフラが整っていること。室内のLED照明に小さなモデムを入れると、たんなる照明だったものが通信機能をもつようになる。常にシャワーのように降り注ぐ光に端末をかざせばデータが受信できるのです」

室外の場合も同じだ。LEDを利用した信号機や車のテールランプは昼間でも点いており、そこに通信機能を付加するだけで通信もできるようになる。

さらに可視光は電波との干渉がなく、電波法※1による制約を受けないというメリットもある。「照明を設置するのに許可がいらないのと同じ。持ち主の意思で自由に設置し、利用することができます」

他にも、他の電子機器や人体への影響がなく、病院や飛行機の離発着時でも使えること。通信範囲(=光の出ている範囲)が一目でわかること。光の遮断により、情報の漏れが簡単に防げることなど、可視光通信にはメリットが多い。まさに新時代の通信テクノロジーといえそうだ。

 

屋外の可視光を運転支援に活用

可視光通信は現在、ビルや地下街といったGPS電波の届かない場所で位置情報を提供するサービスなど、おもに室内での実用化が進んでいる。

そんな中、屋外における可視光通信について研究するのが鎌倉教授の研究室だ。「信号機から送られてくる『あと○秒で青になる』といった情報や、前の車のテールランプから送られてくる『ブレーキを踏んだ』という情報を車載カメラで受信し、アクセルやブレーキを自動制御するシステムなど、可視光通信の運転支援への応用を考えています」(鎌倉教授)。秘匿性や信頼性をいかに付加するかも研究の課題だという。

アイデア次第でさまざまな活用法が考えられる可視光通信。普及のために、誰もが“いいね”と思うようなキラーアプリケーション※2の出現が待たれる。

ゼミの学生の論文指導にも力を入れている鎌倉教授。「研究論文を書くには総合力が必要。大学生になったら英語・数学・専門のトータルな力を身につけてほしい。そのためにも学生には英語の論文を読ませるようにしています」と語る。「さらに大切なのは論理的思考を身につけること。結論を先に述べ、結論に至った理由を優先度の高い順に並べる習慣をつけてほしい。そうして身につけた力は、就職活動やビジネスの現場でも必ず役に立ちます」

※1…300万メガヘルツ以下の周波数をもつ電磁波のことを電波と呼び、厳密な規則で管理されている。
 ※2…特定の分野に利用されるアプリケーションの中で、対応するハードウェアを購入させるような、圧倒的な魅力を持ったアプリケーションのこと。

お話を聞いた先生! 

鎌倉浩嗣教授 情報科学部 情報工学科
 

 

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