日本選手権で力強い泳ぎを見せた渡部香生子

4月10日から13日まで東京辰巳国際水泳場であった競泳の日本選手権。渡部香生子(かなこ)(東京・武蔵野3年)=東京・武蔵野中出身=は100メートルと200メートル平泳ぎをともに高校新記録で優勝すると、200㍍個人メドレーも制して3冠を達成した。1年時に出場したロンドン五輪後から精神面で成長し、記録を伸ばした。( 文・田坂友暁、写真・中村博之)

日本選手権の200メートル平泳ぎを、2分21秒09の高校新記録で制した後、渡部は言った。「自分の泳ぎと気持ちをコントロールできている。落ち着いて自信を持ってレースに臨めた」
 この記録は、昨年の世界選手権(バルセロナ)で、3位に入れるほどの好タイムだった。

ロンドン五輪後 不振に

高校1年時に挑んだロンドン五輪選考会。200メートル平泳ぎで、自己ベストを更新して代表に選ばれたが、五輪本番は準決勝敗退。
 その後は思うように記録が伸びずスランプに陥る。昨年の日本選手権は200㍍平泳ぎで決勝にすら進めず、予選後に「平泳ぎが分からない……」と涙を流した。

つらいときこそ笑顔でいよう

1年以上不振にあえぐ渡部を救ったのが、所属するJSS立石で昨年の日本選手権後から渡部を指導する竹村吉昭コーチだ。泳ぎが気持ちに左右されやすい渡部に、こう声を掛けた。「つらいときこそ、笑顔でいなさい」
 この一言が、渡部を大きく変えた。「笑顔でいる時間が増えた」ことで、気持ちと泳ぎが安定するようになった。普段の練習中も「一つでもいいから、これだけは頑張ろう」と小さな目標を見つけ、努力を積み重ねて自信を取り戻した。その成果が今回の3冠へとつながった。
 8月のパンパシフィック選手権(オーストラリア)とアジア大会(韓国)には日本代表として出場する。「200メートル平泳ぎで金メダルを取りたい」と力強く語った渡部の目は、自信に満ちあふれていた。

わたなべ かなこ
1996年11月15日、東京都生まれ。JSS立石所属。4歳から水泳を始める。100メートル、200メートル平泳ぎの高校記録、200㍍個人メドレーの日本記録保持者。167センチ、57キロ。