人間同士の自然なコミュニケーションに近づける

「お母さんに電話して」と話しかけると、「お母さんの電話番号に電話をかけています」と返事が返ってくる──「会話ができるシステム」と聞いて、iPhoneの音声認識アプリケーションSiriを連想する人は多いだろう。

「音声認識と音声合成の技術を組み合わせたSiriのような会話システムでは、人が話したことをほとんど間違いなく認識することができるようになっています。最低限、音声で言葉のやりとりができれば、それは会話が成立しているということ。ただし最初のうちは物珍しさから頻繁に利用する人も、これらのシステムの利用機会は次第に減っていくのではないでしょうか」と千葉工業大学 先進工学部 未来ロボティクス学科准教授の藤江真也先生は話す。

「その理由は、現存の会話システムとの会話が、人間同士の自然なコミュニケーションにはほど遠く、使いづらいこと。そして原則として1人対スマホという1対1の会話しかできない点にあります。僕が目指しているのはこうしたシステムの一歩先をいった、より人間同士に近いやりとりの実現。そのためにはどういった機能を付け加えればいいのかという発想で研究に取り組んでいます」

言葉以外の周辺情報が
意思の疎通を助ける

では藤江先生がいう「自然なコミュニケーション」とはどんなものだろう。実は人と人とが会話をする際には、言葉はもちろん、ジェスチャーや視線の動き、表情、声のトーンなどの周辺情報がとても重要な役割を担っている。

「例えば人は相手の話を聞いている時に直立不動で黙っているわけではありません。『あなたの言っていることはわかりますから続けてください』という意味のあいづちを打ったり、時には小首をかしげることで『よくわかりません』と伝えたりして意思の疎通に役立てます」

藤江先生の研究室ではこうした周辺情報を利用して、人がストレスを感じない、感性の豊かな会話ができるシステム(=ロボット)の実現を目指している。

中でも現在進めているのは、システムが発話する時の「間」を、人にとって快適なものにする研究。

「ストレスのない会話を実現するには、相手の発話が途切れた後どのくらい間をあけて話し始めたらいいかという問題がとても重要になってきます。人はシステムに発話をかぶされると強い不快を感じるため、Siriなどでは確実に話し終わったことが判定されるまでかなりの間をとっているようです。一方、人間同士のやりとりでは頻繁に発話がかぶるにも関わらず、快適なタイミング、リズムで会話を続けることができます。むしろわからないことがあれば途中で口をはさんでもらったほうが最終的に効率的な会話ができることもありますね。

私たちはこうした快適な間を実現するため、大量の音声データから得られるさまざまな情報を抽出・認識して、システムに生かしているのです」

藤江先生が所属する研究グループでは、会話機能を研究するためのロボットSCHEMA(シェーマ)を開発。訪問型高齢者施設で行われているゲームに解答者として参加させ、場を盛り上げることにも成功しているそうだ。

ロボットを作り、動かすことで
総合的な力が身につく

未来ロボティクス学科の特色は、1年次からマイコン使ったロボット作りに取り組むこと。

「ロボットを作り、動かすためには、機械・電気・情報処理などの知識が必要。それらをすべて学んだ上で、作ったロボットの有用性を実証するところまで行えるのがこの学科の魅力」と藤江先生。総合的な知識・技術が身につくため、卒業生は社会で高く評価されているという。

最後に、藤江先生が進めるロボットは近い将来、私たちの生活をどう変えることになるのだろうか。

「有能な秘書のようにさりげなく空気を読み、気を利かせることができる『パートナーロボット』や、1対1だけではなく、複数人と会話ができる『コミュニケーションロボット』を実現させるために、私たちの研究を役立てたいと考えています」と藤江先生は話した。

お話を聞いた先生! 

藤江真也准教授 先進工学部 未来ロボティクス学科
 

 

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