普段はロックを愛する女子高校生が、この夏、僧侶の資格を取得。お盆参りデビューを果たした。声楽で鍛えたお経の声と気配りが、門徒(浄土真宗の信者)の心に染み込み大評判。〝指名〟がかかるほどの人気を呼んでいる。 ( 文・写真 南隆洋)

8月14日、大分市内の工藤久代さん宅の仏前に、黒いけさに黒髪の尼が座った。

「我説彼尊功徳事〜」

小柄な体から発せられる経の響きは澄み渡り、参列者の心を仏のもとにぐいぐいと引き込んだ。

8月5日に得度(※メモ参照)し、法名「楽音」を名乗る広瀬朋さんだ。

15分程の読経を終えると向きを変え「足の方はいかがですか?」と、工藤さんのくじいた足を気遣った。

「堂々として澄んだ、すがすがしい声に心が洗われました。しっかりと気配りして、人の心をそらさない。先々が楽しみです」と工藤さんは絶賛した。

盆の3日間で50軒を回った。年上の門徒に「法話」や「説教」は遠慮する。逆に、お年寄りから励まされ、茶を飲みながら楽しく語り合う。その結果、「これからは朋ちゃんが来て」と声が掛かるようになった。

「高校生尼ちゃん」の誕生だ。

広瀬さんは、452年前に開かれたと伝えられる大分市内の真宗大谷派光明寺19代住職善朗さんと美奈さん夫妻の一人娘。2歳のころから、祖父の前住職明信さんを含む3世代で一緒に、本堂での朝夕のお勤めを欠かさない。お風呂でも経を唱え、「皮膚から経が染み込んだ」(美奈さん)。

3歳からピアノを始め、児童合唱団にも入った。現在は声楽のレッスンを受けながら音楽大を目指す。元高校音楽教師で、現在は福祉施設で音楽療法に携わりながら法要も勤める、母の後ろ姿を追う。

文化祭ではロックバンドのボーカルを担当。「マキシム ザ ホルモン」の大ファンだが、各地で見られるようになった本堂でのコンサートをする気はない。「嫌だ。お寺は人の死に関わる所。仏様に失礼です」 人見知りせず笑顔でハキハキ、お年寄りも若者も大好き。「お寺に生まれたからには、手伝いをして、門徒さんに喜んでいただきたい。周りに花を植えて、若い人も気軽に来ることができる、明るく楽しいお寺にできればいいな」と夢を追う。