試合を決定づける3点目を決めた餅山大輝(右)。GKの位置を見極めたループシュートだった

 

 第94回全国高校サッカー選手権の決勝が1月11日、埼玉スタジアム2002で行われ、東福岡(福岡)が国学院久我山(東京A)を5-0で下し、17年ぶり3度目の優勝を遂げた。昨夏の全国高校総体(インターハイ)と合わせ、史上6校目の「夏・冬2冠」へと駆け上った。(文・茂野聡士、写真・幡原裕治)

全員守備、全員攻撃

初の決勝進出を果たした国学院久我山の勢いをのみ込む、王者の風格だった。前半36分に鮮やかな連携で三宅海斗(3年)が先制点を奪うと、後半には4得点を挙げる圧巻の戦いぶり。「応援してくれた人たちのおかげです」。主将の中村健人(3年)は、味方と息を合わせてトリッキーな直接FKを決めるなど、2得点を挙げて勝利に貢献。喜びをかみしめた。
 インターハイに続く、冬の選手権制覇。名実ともに高校ナンバーワンの座に輝いた東福岡だが、今季は新チーム立ち上げのころから、決して「最強」だったわけではない。昨季は中島賢星(横浜F・マリノス)らタレントが多くそろい、インターハイ制覇、選手権ベスト16の成績を残した。その代と比べると「個の部分で突出したものが少ない」(森重潤也監督)チームだったが、その分、全員守備・全員攻撃の意識を徹底した。
 試合を決める3点目を奪った餅山大輝(3年)は、インターハイ制覇後の練習で特に強化した点について「走力の部分でした」と話す。

キーマン復活

そして今大会、チームに勢いをもたらしたのは、準決勝から戦列に戻った、インターハイ得点王・藤川虎太朗(2年)の存在だ。藤川は大会前に負った右足首ねんざの影響で、準々決勝まで出場はなかった。しかし決定力だけでなく、ボールを持っていないときの動きでも勝負できるキーマンが復帰したことで「ボールが回しやすい」(鍬先祐弥=2年)状況が生まれ、パスワークがより安定した。
 決勝に出場した14人中、2年生は6人を占める。日本一を経験した選手たちが最上級生となる来季、チームはさらなる成長を果たすはずだ。


 TEAM DATA 
 1970年創部。部員281人(3年生72人、2年生108人、1年生101人)。インターハイ優勝3度。今季は高円宮杯プレミアリーグ西地区2位。OBに長友佑都(インテル・ミラノ)、本山雅志(ギラヴァンツ北九州)ら。